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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題7】
MTX全身投与により子宮温存可能となった中期人工妊娠中絶後・癒着胎盤の1症例
西川 裕子, 立花 聡司, 野口 舞子, 伊藤 めぐむ, 川島 秀明, 井上 潤, 佐藤 孝
済生会習志野病院産婦人科
【緒言】中期人工妊娠中絶後,胎盤が娩出せず,超音波断層法およびMRIの所見から癒着胎盤を疑い,メトトレキセート(MTX)投与による保存的療法を行って子宮温存し得た症例を経験したので報告する.【症例】33歳.妊娠分娩歴:3経妊0経産(初期人工妊娠中絶3回).既往歴:特記すべき事なし.現病歴:近医にて妊娠14週の診断後,当科紹介受診,妊娠18週5日中期人工妊娠中絶目的に入院.同日頸管拡張処置を行い,翌朝より子宮収縮剤(PGE1膣坐剤)にて分娩誘発を開始した.翌妊娠19週0日,児を娩出したが直後に臍帯断裂し,胎盤鉗子を用いて胎盤の一部を把持し牽引するも部分的にちぎれるのみで剥離兆候認めず,癒着胎盤疑いとなる.超音波にて子宮内に遺残胎盤とみられる高輝度像を認め,MRIにても子宮内腔に一部筋層との境界不明瞭な癒着胎盤を疑う構造物を認めた.妊孕性温存の希望強く抗生剤・子宮収縮剤の点滴にて保存的に経過を診たが胎盤娩出に至らなかった.超音波のカラードップラーにて癒着胎盤内に血流を豊富に認めたため,インフォームドコンセントを得て中絶後7日目よりMTX50mg/m2/週の全身投与を2コース行った.血清β-hCGは中絶後1日目3.2ng/ml,18日目0.4,26日目<0.1(検出限界以下)と順調な低下を認めた.超音波所見上,中絶後71日目に胎盤内かつ周囲の血流消失を,さらに84日目には明らかな胎盤様構造物の消失を確認した.造影MRIにても経時的に血流減少を認め,中絶後119日目に遺残胎盤像かつ血流の消失を確認した.また,月経は中絶後84日目より再開した.【考察】胎盤娩出が困難な症例でも,全身状態が安定し妊孕性温存希望が強い場合は,保存的治療は可能と思われた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
303-303, 2012
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