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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題9】
劇症型A群溶連菌感染症を疑わせる急激な重症敗血症性ショックをきたした妊婦の一例
瀬戸 さち恵, 難波 聡, 仲神 宏子, 湊口 美紀, 菊地 真理子, 西林 学, 板倉 敦夫, 石原 理
埼玉医科大学病院産婦人科
急激に敗血症性ショックをきたし胎児機能不全を呈した一例について報告する.〔症例〕32歳,初妊婦.妊娠25週から切迫早産のため前医入院管理となっていた.33週に突然39℃の発熱あり.右水腎症を認めたため腎盂腎炎を疑い当院へ母体搬送となった.体温38.9℃,血圧105/40mmHg,脈拍146回/分でNSTではRFSであった.高CK血症,肝機能障害,血小板低下,凝固障害を認めたため塩酸リトドリンを中止したが,その後悪寒・戦慄,持続する腹痛,口唇チアノーゼが出現し顔面蒼白となった.体温は42℃まで上昇,ショックバイタルとなった.急激に状態が進行したため劇症型A群溶連菌(GAS)感染症による敗血症性ショックを疑い,ただちにABPC大量投与を開始した.間もなく子宮収縮頻回,NRFSとなったため,母体状態悪化の可能性についても十分ICを行った上で緊急帝王切開施行.術中出血は1065mlであり子宮収縮不全や止血困難感を認めなかったが,低血圧のため挿管下でICUに入室した.術後ABPC12g/日,CPFX,γグロブリンの投与を開始.翌日には抜管,3日目に血培にてクレブシエラとブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌が同定されたため,ABPC大量療法を中止した.CPFXのみ14日間投与し全身状態改善したため退院となった.出生児は2282g男児,Aps4-8,NICU管理中に発熱・CRP上昇を認めなかった.劇症型GAS感染症は診断加療の遅れが妊産婦死亡につながる可能性も高いが,他の原因菌でも同様な所見を示すことがあり,抗菌薬の選択に注意が必要であるとともに,塗抹検査など時間外細菌検査の体制構築が望ましい.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
309-309, 2012
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