|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題9】
妊娠24週に診断し治療を行った進行乳癌の1例
山田 諭1, 菊地 範彦1, 角田 玲子1, 清澤 恵未1, 浅香 亮一1, 田中 恭子1, 小原 久典1, 高津 亜希子1, 大平 哲史1, 金井 誠2, 塩沢 丹里1
信州大学産婦人科1, 信州大学保健学科2
妊娠中および分娩後1年以内に発見された乳癌はPABC(pregnancy associated breast cancer)といわれ,若年発症が多く乳癌に対する意識が低い事や,妊娠産褥の乳房変化により早期発見ができずに進行癌で診断されることが多い.今回我々は,妊娠23週に進行乳癌と診断され,妊娠中に化学療法を施行した症例を経験したので報告する. 症例は27歳の1回経産婦で悪性腫瘍の家族歴なし.近医産婦人科にて妊婦健診を行っていた.妊娠18週の時に左乳房腫瘤を認め,乳腺炎として治療が行われた.腫瘤の増大傾向があり妊娠23週に外科に紹介となり,左乳房全体の腫大と左腋窩および鎖骨上リンパ節の腫大もあり乳癌が疑われ,妊娠24週6日に当院外科および産婦人科に紹介となった. 左乳房の針生検にてinvasive ductal carcinomaと診断され,造影CT検査で多発肝転移も認めStage IVであった.妊娠週数および早期治療開始の点から妊娠中に化学療法を行う方針とした.FAC(5-FU,アドリアマイシン,シクロホスファミド)療法を開始し,3コース終了時点で乳房腫瘤およびリンパ節の縮小は認めたが肝転移巣の増大があり,トラスツズマブ導入が必要とされた.化学療法変更前の妊娠34週6日から分娩誘発を行い,妊娠35週0日に2358g(AFD)の男児を経腟分娩した.児はGCU管理となり,その後の発育・発達に異常は認めていない.母体は現在も乳癌の治療を継続している. 妊娠中の乳癌は診断が遅れる場合があり,妊娠中に乳房腫瘤を認める場合には乳癌も念頭に置いた対応が必要である.また妊娠中の化学療法に関しては,児への大きな影響なく施行可能とされており,2nd trimesterにおける治療選択枝の1つとなりえる.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
310-310, 2012
|