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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題11】
HSV感染が発症誘因と考えられた妊娠中赤芽球癆の1例
鬼塚 真由美, 吉田 卓功, 羅 ことい, 栗田 郁, 塚田 貴史, 田丸 陽子, 後藤 亮子, 市川 麻以子, 遠藤 誠一, 坂本 雅恵, 島袋 剛二
総合病院土浦協同病院産婦人科
【緒言】赤芽球癆(pure red cell aplasia)は骨髄造血細胞の中で,赤血球系のみが選択的に低形成に陥り,貧血をきたす病態である.今回我々は妊娠中に単純へルペスウィルス感染に伴う肝炎を発症し急性の赤芽球癆を発症した症例を経験したので報告する.【症例】36歳1経妊1経産.妊娠20週頃より全身掻痒感と頚部リンパ節腫脹あり,内科と皮膚科を受診し,経過観察されていた.妊娠22週頃より38℃台の発熱あり,妊娠25週の妊婦健診にて全身の黄疸を指摘され当院を紹介受診.T-bil 9.5mg/dl,D-bil 6.7mg/dlとD-bil優位の黄疸,GOT 739IU/l,GPT 595IU/l,LDH 733IU/lと上昇していた.HSV IgM 2.13と陽性で急性肝炎の原因として単純へルペスウィルス感染が最も疑われた.ウルソデオキシコール酸内服開始後,Bil,肝酵素は速やかに改善したがPlt 14.1万/μl,Hb 9.1g/dl,WBC 3490/μlとウィルス感染による血球貪食症が疑われた.その後,Plt,WBCは自然軽快したが,Hb 5.2g/dl,網赤血球1/‰と赤血球系のみの造血障害を認めた.骨髄穿刺では赤芽球系前駆細胞のみの減少を認め,赤芽球癆と診断された.プレドニゾロン投与と赤血球輸血を行ったところ貧血は徐々に改善した.【考察】赤芽球癆は免疫学的異常を背景として発症すると言われている.本症例において,肝炎や妊娠状態に伴う特殊な免疫状態の変化が発症に関与した可能性が大きいと考えられる.妊娠中に重篤な貧血をきたした場合は赤芽球癆も鑑別診断の一つに置く必要がある.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
313-313, 2012
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