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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題11】
遺伝性血管性浮腫を合併した妊娠の一例
小林 未央, 定方 久延, 家坂 直子, 水谷 亜紀子, 笠原 慶充, 田村 友宏, 勝俣 祐介, 峯岸 敬
群馬大学医学部附属病院産婦人科
【はじめに】遺伝性血管性浮腫は,補体成分C1インヒビター(C1INH)の欠損による常染色体優性遺伝疾患で,発作性に皮下浮腫,粘膜下浮腫,消化器症状,喉頭浮腫などの血管性浮腫症状を生じる.今回我々は遺伝性血管性浮腫を合併した妊娠例を経験したので報告する.【症例】34歳 未経妊未経産.既往歴:32歳時,遺伝性血管性浮腫と診断され,時々発作を繰り返していた.現病歴:今回自然妊娠.妊娠成立後より腹痛症状を主とする血管性浮腫発作が頻発し,発作時はコハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムとトラネキサム酸点滴静注にて加療を行っていた.妊娠中の胎児経過に異常なし.血管性浮腫発作は精神的ストレス,外傷,過労,妊娠などで誘発されることが報告されており,経腟分娩,帝王切開の双方において発作のリスクを伴うと考えられた.長期予防としてトラネキサム酸1.5g/日内服とし,発作時対策として乾燥濃縮ヒトC1-インアクチベーター,気管挿管,気管切開など準備し,ICU・麻酔科,耳鼻科にも協力を要請した上で経腟分娩を行う方針とした.妊娠37週4日より管理入院.妊娠38週0日 自然破水・陣痛発来し,妊娠38週1日 児娩出に至った.分娩経過中に血管性浮腫発作は認めず,産褥経過も良好であった.児は3170g Apgar score 8/9.呼吸障害や血管性浮腫等認めず,良好に経過している.【考察】遺伝性血管性浮腫は精神的・身体的ストレスにより血管性浮腫発作が誘発され,妊娠・分娩に伴う発作リスクが高いことが憂慮される.本症合併例の分娩においては喉頭浮腫などの発作時対策を入念に講じておくことが重要であると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
314-314, 2012
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