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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題12】
卵巣奇形腫摘出後に改善を認めた傍腫瘍性辺縁系脳炎の1例
草西 多香子, 中島 義之, 田代 英史, 和田 真沙美, 千葉 純子, 諸岡 雅子, 坂井 昌人, 正岡 直樹
東京女子医科大学八千代医療センター母体胎児科・婦人科
近年,若年女性に発症する急性非ヘルペス性辺縁系脳炎の1つとして,抗NMDA抗体産生により発症する傍腫瘍性辺縁系脳炎が明らかとなり注目されているが,未だ産婦人科医に十分に周知されているとはいえない現状である.今回我々は,ステロイドパルス療法,免疫吸着療法,ガンマグロブリン療法では改善せず,両側卵巣奇形腫摘出後に改善を認めた傍腫瘍性辺縁系脳炎の1例を経験したので報告する. 症例は38歳2回経妊2回経産婦で,家族歴・既往歴ともに特記すべきことは認めなかった.発熱と頭痛を主訴に前医を受診した後,意識障害と奇異行動が出現したため,当院へ救急搬送入院となった.入院後の各種ウイルスの検査はすべて陰性であり,ステロイドパルス療法,免疫吸着療法,ガンマグロブリン投与などの免疫療法を施行したが,治療効果はみられなかった.その後,骨盤MRI検査で両側卵巣奇形腫を認め,傍腫瘍性辺縁系脳炎が疑われたため,入院36日目に左付属器切除術及び右卵巣嚢腫摘出術を施行した.術後病理組織検査の結果は,左卵巣未熟奇形腫(grade1),右卵巣成熟奇形腫であった.術後5日目に自発呼吸を認め,術後8日目に簡単な指示に従えるようになり,術後27日目に気管内チューブを抜管した.その後,意識障害・臨床症状は順調に改善し,脳炎発症から5か月後にリハビリ目的に転院となった.転院時には短期記憶障害が残るのみで,日常生活では時に少し介助が必要なレベルにまで改善した.その後,入院時の血液検査の結果が抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)抗体陽性と判明し,抗NMDA受容体脳炎であったことが判明した.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
319-319, 2012
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