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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題13】
ラマン分光法による細胞診標本への応用
福田 麻実, 山本 泰弘, 田岡 英樹, 浅川 恭行, 久具 宏司, 久布白 兼行
東邦大学医療センター大橋病院産婦人科
目的:ラマン分光法はレーザー光照射により生ずる散乱光を検出することによって被照射物質の分子構造を解析することが可能である.我々は1,064nm励起波長によるレーザーを用いて,子宮頸癌組織からラマンスペクトルが検出可能であることを報告してきた.そこで今回,子宮頸部細胞診標本を用いて細胞レベルでラマンスペクトルの解析が可能であるか検討した.方法:(1)対象は院内IRB承認後,患者から同意を得て採取した子宮頸部細胞診標本25検体(NILM:11例,LSIL:5例,HSIL:5例,SCC:4例)である.(2)レーザー照射はNd:YAGパルスレーザー(波長1,064nm)を用い,顕微鏡下で約1μmのスポットサイズとした.各標本において,細胞の核,細胞質それぞれについてラマン解析を行った.成績:(1)NILM,LSIL,HSIL,SCCすべての標本で,細胞の核に一致して蛋白質の振動である1662, 1449, 1256, 1004 cm-1,及び核酸の振動である1582, 788 cm-1にピークを有するラマンバンドが検出可能であった.またこれらの核のラマンスペクトルはすべて細胞質のスペクトルに比べ10倍程度の強度を示した.(2)LSIL,HSILの症例で,扁平上皮型異型細胞では核酸に帰属されるバンドの強度増大が見られた.またSCCのがん細胞の核はHSILよりもラマンスペクトルの強度は強く,蛋白質/核酸のバンド強度比に違いが見られ,正常細胞,異型細胞と異なるスペクトルを示した.結論:細胞診標本について,ラマン分光法を用いて子宮頸部細胞のラマンスペクトルが検出可能であった.正常扁平上皮細胞と異型細胞,がん細胞の間で異なるラマンスペクトルを示したことから,本測定法が新たな細胞診標本の解析法となる可能性が示された.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
323-323, 2012
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