|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題14】
フォンダパリヌクスが奏功した巨大子宮筋腫合併静脈血栓症(VTE)の一例
玉井 はるな, 沖 明典, 高野 克己, 櫻井 学, 岡崎 有香
茨城県立中央病院婦人科
婦人科腫瘍においてVTEが術前からも多く存在することが知られ,術前診断・治療が提唱されている.今回は従来ヘパリン治療が主流とされてきたVTEに対し,昨年治療薬として上市したフォンダパリヌクスが奏功した症例を報告する.同薬はAPTTモニタリングが不要であること,持続点滴静注ではなく1回/日の皮下注であることがヘパリンと比べた際の利点である.症例は43歳の未経妊未婚婦人.4年前から腹部膨満と易疲労感を自覚するも放置していた.気管支炎を機に受診した内科でHb2.7g/dlの重症貧血と体表からも触れる巨大下腹部腫瘤を指摘され,当院へ紹介された.月経歴は30日型,過長・過多であった.骨盤内に成人頭大の腫瘤を触知し,MRIで子宮体部後壁に巨大筋腫(13×18×18cm)を認め,重症貧血治療目的で入院した.入院時Dダイマーが13.0μg/mlと上昇していたため,下肢血管超音波検査を施行したところ左ひらめ筋静脈に血栓を認め,引き続き行った胸部CTで両側末梢の多発肺塞栓を認めた.PaO2の低下および心負荷所見を認めず,全身状態が良好であったためIVCフィルターの留置はせずフォンダパリヌクスを開始し,筋腫に対しては緊急出血時の子宮動脈塞栓術を念頭に置きつつGnRH agonist(GnRHa)による待機治療を行い後日手術とする方針とした.フォンダパリヌクスは昨年上市され,VTEの治療効果が期待されているが本症例では14日間投与で奏功した.貧血の改善とGnRHa投与後初回の月経経過を確認してから外来管理とした.今後はGnRHa投与を継続しつつ単純子宮全摘術施行のタイミングを計っていく予定である.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
325-325, 2012
|