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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題20】
子宮体部に発生したXanthogranulomatous inflammationの1例
鮫島 大輝, 井上 知子, 織田 克利, 曾根 献文, 森 繭代, 松本 陽子, 有本 貴英, 川名 敬, 矢野 哲, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
【緒言】黄色肉芽腫性炎症(Xanthogranulomatous inflammation:XGI)とは,foam cell(xanthoma cell)と呼ばれる組織球を主体とした肉芽腫を形成する病態で,脂肪を貪食した泡沫状マクロファージの集積を特徴とする.胆嚢,腎臓での発生の報告が多いが,女性生殖器での報告は極めて稀である.今回我々は子宮体部にXGIを認めた症例を経験したので報告する.【症例】68歳,4経妊2経産,3cm大までの多発子宮筋腫を20年来より指摘されていた.褐色帯下を主訴に受診,内膜細胞診・組織診で明らかな悪性所見はなかったが,炎症細胞浸潤が認められた.発熱・子宮体部の圧痛と炎症反応高値がみられたため,子宮内感染の診断で,抗菌薬治療を行った.MRIでは多発筋腫の他に,子宮後壁に6cm大のT2WI高信号域を認め,膿瘍形成が疑われた.炎症反応改善後に腹式単純子宮全摘,両側付属器切除術を施行した.術中所見では,子宮とS状結腸間膜とが強固に癒着しており,同部位を剥離した際に黄色の液体漏出を認めた.術中培養での起炎菌の同定は困難であった.術後経過は良好で,炎症反応も陰転化した.摘出した子宮後壁には黄褐色の結節病変を認め,組織像からXGIと診断された.病変の主座は漿膜および漿膜直下で,広範な肉芽組織形成を認め,筋層内にも炎症が及んでいたが,内膜には及んでいなかった.【考察】女性生殖器におけるXGIは,付属器もしくは子宮内膜からの発生例が主であり,本症例のように漿膜面から筋層に病変の主座があったとする報告はみられなかった.病態の一つとして,経卵管的に内膜の炎症が腹腔内に波及し,子宮漿膜面とS状結腸間膜,さらには子宮筋層内へと進展したのではないかと考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
342-342, 2012
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