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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題22】
帝王切開後子宮創部に発生した膿瘍により分娩時子宮破裂をきたした1例
高島 明子, 竹下 直樹, 横山 安哉美, 萬来 めぐみ, 安田 豊, 矢野 ともね, 木下 俊彦
東邦大学医療センター佐倉病院産婦人科
(緒言)既往帝王切開後経腟分娩時に最も重要視するべきリスクは子宮破裂である.TOLAC(trial of labor after cesarean section)を施行する際,S-VBAC(successful-TOL)の因子を満たした症例でも厳重な管理下に分娩を取り扱う事が必要とされる.今回帝王切開後子宮創部に発生した膿瘍が子宮破裂のリスク因子と考えられた1例を経験したので報告する.(症例)35歳1経妊1経産.7年前に骨盤位の適応で腹式帝王切開術を施行された.前医で妊娠40週3日に予定日超過の適応で促進分娩となった.子宮口全開大後に無間歇性の腹痛が出現し,reassuring fetal statusであったが不全子宮破裂を疑われ,吸引分娩となった.分娩時間は4時間43分,出血量は714g,児は3258g,AP9/10点であった.腹痛が増強した為,当院に救急搬送となった.経腹超音波検査にて帝王切開瘢痕部に凝血塊とfree spaceを認め,子宮破裂の診断で緊急手術を施行した.腹腔内には中等量の腹水を認めた.膀胱と子宮体下部の間の漿膜膨隆部に切開を加えた所,瘢痕部に径4cm大の膿瘍と凝血塊を認めた.膿瘍は子宮内腔に穿通して,瘢痕部から子宮頸管方向にV字裂創を認めた.膿瘍除去,ドレナージを施行,セフェム系抗生剤の投与にて軽快し第9病日目に退院となった.(考察)妊娠前から分娩時まで腹痛や熱発,炎症反応の上昇を認めなかった事,妊娠36週の腟及び手術時の膿瘍の培養検査共にGBS陽性であった事から,分娩前に経腟的上行性感染をし,帝王切開瘢痕部に膿瘍を形成,子宮筋の脆弱化を招いた事が子宮破裂の契機となった可能性が考えられた.TOLACにおける,分娩開始前・経過中・分娩後に詳細な子宮切開創部精査の必要性を再認識させられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
346-346, 2012
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