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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題24】
甲状腺機能亢進症を伴った胞状奇胎の一例
中山 琢生, 中村 晃和, 高田 眞一, 千島 史尚, 山本 樹生
日本大学板橋病院産婦人科
【はじめに】甲状腺機能亢進症を合併し,治療に難渋した侵入奇胎の一例を経験したので,若干の文献的考察を含め症例報告する.【症例】49歳女性,妊娠分娩歴は7回経妊2回経産.最終月経より90日目,無月経を主訴に前医を受診,尿中hCG異常高値と経腟超音波にて絨毛性疾患を疑われ当院紹介となった.当院初診時,尿中hCG異常高値,臨床症状として頭痛・動悸・多汗を認め緊急入院となった.血液検査所見で甲状腺機能亢進を認め,血中hCG20万以上と異常高値であった.経腟超音波にて子宮腔内に異常血管を伴う胞状奇胎を疑う病変部を認めた.明らかな転移巣を認めず,骨盤MRIでは子宮筋層浸潤が不明瞭であった.【経過】甲状腺機能亢進症にヨウ化カリウム投与を開始した.臨床症状改善を認めるもF-T4の改善は認めなかった.本人同意のもとに最終月経より101日目に手術療法を選択し単純子宮全摘出術を施行した.病理学検査では,間質の水腫状変性を伴う奇胎絨毛を認め,子宮筋層に中間型トロホブラストの侵入増生が認められた.子宮筋層浸潤は浅層のみであった.術後診断は侵入全胞状奇胎.術直後よりhCG・F-T4の改善を認め,術後10日目に全身状態良好にて外来経過観察となった.【考察】hCGがTSH受容体に作用して甲状腺を刺激するが,通常妊娠hCGの甲状腺刺激活性は,TSHの1/1000程度であるのに対し,胞状奇胎産生のhCGは,アシアロhCGで活性が強いとされている.【まとめ】甲状腺機能亢進症を合併した侵入奇胎の症例を経験した.重度の甲状腺機能亢進症を呈する場合,クリ―ゼに注意が必要で,まず甲状腺機能改善を先行させる必要がある.それとともに的確な病態把握,診断を行い治療することが重要である.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
353-353, 2012
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