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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))

【一般演題】
母体TRAb高値に伴い反復して胎児甲状腺機能亢進症を発症した1例


片倉 慧美, 池ノ上 学, 松本 直, 門平 育子, 峰岸 一宏, 宮越 敬, 青木 大輔, 吉村 𣳾典
慶應義塾大学医学部産婦人科


 バセドウ病合併妊娠ではTSH受容体抗体(TRAb)の胎盤通過に伴い,児に甲状腺機能亢進症を発症させることがある.今回我々は第1子および第2子ともに胎内で甲状腺機能亢進症を発症した母体TRAb高値例の周産期管理を行い,良好な予後が得られた1例を経験したので報告する.症例は3経妊2経産.24歳時にバセドウ病と診断され甲状腺亜全摘および放射性ヨード治療を施行するも,TRAb高値が持続した.第1子経過:妊娠初期,母体TRAb 397 IU/L(正常値≦1.0 IU/L)と異常高値を認めた.妊娠23週時の胎児超音波検査にて甲状腺腫大および頻脈を認め,甲状腺機能亢進症が示唆された.直ちに母体へのヨード剤およびプロピオチオウラシル(PTU)投与による経胎盤的治療を開始した.児心拍および甲状腺容積を指標に投与量を調節し,妊娠36週3日に選択的帝王切開分娩に至った(男児,1966g,Apgar score 8/9点).児のTRAbは276 IU/Lであり,甲状腺腫大を認めたため抗甲状腺薬の投与を行い,経過は良好であった.第2子経過:第1子分娩後,母体のバセドウ病症状は改善を認めなかったが第2子を自然妊娠.第1子時同様,妊娠初期の母体TRAbは依然として高値を示し,妊娠21週より胎児超音波検査にて甲状腺腫大および頻脈,心嚢液貯留を認めため,第1子と同様に経胎盤的治療を開始し,妊娠35週4日に帝王切開術を施行した(男児2034g,Apgar 8/9点).児のTRAbは120 IU/Lであり,甲状腺腫大を認めたため,抗甲状腺薬投与を行った.母体TRAb陽性例では,胎児の甲状腺機能異常を引き起こす可能性がある.産科・内科・小児科の連携による妊娠早期からの慎重な経過観察ならびに症状出現時には経胎盤的治療が必要と考えられる.


関東連合産科婦人科学会誌, 49(3) 394-394, 2012


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