|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
子宮機能の保持にはどの血管が必要か?〜霊長類動物モデルを用いた子宮血流動態の解析〜
木須 伊織, 阪埜 浩司, 矢野倉 恵, 野上 侑哉, 梅根 紀代子, 辻 浩介, 増田 健太, 植木 有紗, 山上 亘, 進 伸幸, 青木 大輔, 吉村 𣳾典
慶應義塾大学医学部産婦人科
【目的】子宮血流は妊娠・出産を含めた子宮機能の保持に重要な要素である.近年,広汎性子宮頸部摘出術が行われ,子宮及び卵巣動静脈のみからの血流で出産に至っているが,子宮の妊孕性機能の保持にどの血管が必要であるかは議論が続いている.今回我々は,indocyanin green(ICG)蛍光法による赤外観察カメラを用いて,カニクイザルにおける子宮血流動態を解析し,子宮機能の保持にどの血管が必要かについて検討した.【方法】実験施設の倫理委員会承認のもと,解剖学的,生理学的に人に近いカニクイザルを用いて本研究を行った.広汎性子宮頸部摘出術を想定し,子宮を腟管から切断し,左右の子宮及び卵巣動静脈だけで子宮潅流が行われている状態にした.4組の動静脈を様々なパターンでクランプし,ICG蛍光造影により子宮血流動態の観察を行った.また映像輝度解析ソフトウェアを用いて,時間-輝度曲線を作成し,選択血管とその子宮潅流におけるTmax(秒)との関連について解析した.観察終了後,片側子宮動静脈のみで子宮潅流された状態で閉腹した.【結果】ICG蛍光造影により子宮血流動態の観察が可能であった.子宮潅流において,子宮動静脈は有意にTmaxに寄与していたが(p=0.008),卵巣動静脈は寄与を示さなかった(p=0.588).また卵巣動静脈だけでの潅流ではTmaxが延長し,子宮潅流が不良であった.片側子宮動静脈のみでも術後2か月後に月経が回復し,術後4か月後に妊娠した.その後,母児共に異常なく満期で出産に至った.【結論】霊長類動物モデルにおける子宮血流の責任血管は子宮動静脈であった.また妊娠・出産を含めた子宮機能の保持には片側子宮動静脈の血流のみでも十分である可能性が示唆された.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
396-396, 2012
|