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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
全前置胎盤帝王切開術後の大量出血の原因として局所的羊水塞栓症が疑われた1例
戸田 里実, 伊東 正昭, 村上 功, 玉崗 有告, 福田 良夫, 古市 正和, 北井 啓勝
稲城市立病院産婦人科
近年,分娩後の異常出血の原因として局所性羊水塞栓症が注目されている.今回我々は全前置胎盤に対する帝王切開手術後に大量出血を引き起こし,結果的にDICとなり,その原因として羊水塞栓症が強く疑われた症例を経験したので報告する.症例は3経妊3経産.2回帝王切開既往であり,後壁からの全前置胎盤という臨床診断であった.妊娠33週3日に中等量の出血を認め,入院管理とした.35週1日に再度警告出血を認めたため,緊急帝王切開を行った.児娩出後,胎盤剥離は容易で剥離面からの出血も少なく,子宮創をバイクリルで2層に縫合,閉腹した.羊水600ml,術中出血は500g程度であった.しかし,術直後に子宮出血が顕著で,ヨードホルムガーゼを腟内に充填し帰室した.この時点で出血総量1310gであった.帰室後自己血400mlを返血したが,子宮出血持続,収縮不良,腹部創部からの出血も認められた.諸症状,血液検査からDICと診断した.産科的DICスコアは9点であった.その後も血圧下降,頻脈が持続し,ショックインデックス1.5とショック状態となった.両側子宮動脈に対して子宮動脈塞栓術を施行し,さらにFFP,MAP,昇圧剤など投与し,その後,臨床所見,凝固系も改善に向かい救命し得た.術後採血した凍結血清の亜鉛コプロポルフィリン(ZN-CP1),STN検索を浜松医大に依頼した結果はZN-CP1:2.6pmol(正常1.6pmol以下),STN:10.2U/ml(正常45.0U/ml以下)で臨床症状と合わせて局所的羊水塞栓症が強く示唆された.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
409-409, 2012
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