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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
妊娠36週に胎児頭蓋内出血を疑い,出生後,頭蓋内血管腫と診断された一例
伊藤 陽介, 窪 麻由美, 加藤 紀子, 中原 万里子, 平崎 真由子, 上山 和也, 白井 洋平, 鈴木 千賀子, 田嶋 敦, 野島 美知夫, 吉田 幸洋
順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科
【緒言】先天性脳腫瘍は出生100万あたり0.34人の発症頻度で,その中でも頭蓋内血管腫は極めて稀な良性の腫瘍である.今回我々は,妊娠36週健診時,胎児の左右非対称な水頭症を認め頭蓋内出血を疑った1例を経験し,その臨床経過について報告する.【症例】38歳1経妊1経産,既往歴に33歳で甲状腺癌に対し亜全摘を行っており,以後レボチロキシンナトリウム水和物の内服を行っていた.妊娠初期から当院にて妊婦健診を行っており,妊娠34週まで異常は指摘されていなかった.妊娠36週3日の超音波にてBPD95.6mm(+2.2SD)と増大,右優位な左右非対称の側脳室拡大を認めたため,緊急入院とした.入院時検査で胎児心拍モニターはreassuring patternであったが,MRI上両側脳室の拡大を認め水頭症の進行が懸念されたため,緊急帝王切開となった.児は男児,2428g,Apgar score9点(1’),9点(5’),頭囲35.0cm,胸囲27.6cmであった.出生後は急速な頭囲拡大なく脳圧亢進症状も認めず,全身状態は落ち着いていた.日齢13に脳内視鏡生検とOmmaya’s reservior留置術を施行し,病理検査結果で血管腫と診断された.児の経過は日齢41に硬膜下血腫が認められたため,右穿頭ドレナージ術を行った.しかし,右硬膜下血腫は改善したものの側脳室の水頭症は悪化してきたため,日齢57に脳室・腹腔内シャント術の再手術を行った.【結語】胎児期の超音波にて脳室拡大を伴う頭蓋内腫瘤を認めた場合,非常に稀ではあるが鑑別診断として頭蓋内血管腫も考慮する必要があると思われた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
443-443, 2012
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