|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
胎児心臓超音波所見を契機に疑われたLoeys-Dietz症候群の一例
石川 香織1, 高津 亜希子1, 田中 恭子1, 菊地 範彦1, 大平 哲史1, 古庄 知己2, 瀧聞 浄宏3, 金井 誠4, 塩沢 丹里1
信州大学医学部産婦人科1, 信州大学医学部付属病院遺伝子診療部2, 長野県立こども病院循環器科3, 信州大学医学部保健学科4
Loeys-Dietz症候群(LDS)は,Marfan症候群類似の血管系および骨格系病変を主症状とする常染色体優性遺伝の結合組織疾患であり,原因遺伝子としてはTGFBR1および2遺伝子が同定されている.LDS女性の妊娠は,大動脈解離/破裂,子宮破裂のリスクが高いとされ,対応に注意を要する.今回,胎児心臓超音波所見および母体の身体所見から,母児のLDS罹患が疑われ,その後の臨床的精査および遺伝学的検査で児のみ確定診断されたケースを経験したので報告する.症例は28歳0経妊の女性で,妊娠33週6日の胎児心臓超音波にて,肺動脈の拡張,動脈管の瘤状の拡張と蛇行,大動脈弓の蛇行を認めた.母体も腕の長い高身長であったため母児ともにMarfan症候群類縁疾患が疑われ,妊娠34週0日に当科へ紹介となった.母体は眼間開離,頚椎癒合,側彎,椎骨動脈の蛇行を認めた.母児ともにLDSが疑われたが,母体の遺伝子解析上,TGFBR1/2遺伝子に変異は検出されなかった.妊娠37週4日に帝王切開を施行した.児は,眼間開離,二分口蓋垂,屈指など典型的な新生児期のLDSの特徴を有していた.児の染色体検査の結果は,46,XY,t(3;6)(p25;q21)であり,TGFBR2遺伝子座位の近傍に切断点の1つを持つ均衡型相互転座を認め,病因と考えられた.母体は,正常核型であった.児は,転座切断点によりTGFBR2遺伝子が分断され,典型的なLDSを発症したと考えられる.母体は正常核型であったが,LDSの部分症状を認めるため,更なる遺伝学的評価が必要である.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
445-445, 2012
|