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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
胎児腎腫瘍(mesoblastic nephroma)による羊水過多の1例
神保 覚子, 田中 理恵子, 廣岡 潤子, 尾堀 佐知子, 榎本 紀美子, 三原 卓, 石川 浩史
神奈川県立こども医療センター産婦人科
妊娠中に羊水過多,腎腫瘍を認め,出生後にmesoblastic nephromaと診断された症例を経験したので報告する.【症例】32歳.0回経妊0回経産.既往歴・家族歴に特記すべき事項はなかった.妊娠32週に羊水過多を指摘され,妊娠33週で当院を紹介受診した.その後の母体精査では,明らかな妊娠合併症を認めなかった.胎児超音波検査上で,胎児左腎上方に4cm大の比較的境界明瞭な充実性腫瘤を認め,腎臓との境界が一部不明瞭であること,副腎や脾臓など腎周囲の臓器を別に確認できること,栄養血管の一部が腎動脈から分岐していることより,腎腫瘍と胎児診断した.胎児期に発見された腎腫瘍であることより,mesoblastic nephromaを最も疑ったが,Wilms腫瘍も否定できなかった.その後も入院管理を継続していたところ,妊娠37週4日に陣痛発来し,同日経腟分娩となった.児は2448gの男児で,Apgar scoreは1分値8点,5分値9点であった.出生後の精査により左腎腫瘍を認め,日齢10に左腎左副腎全摘出を行い,病理組織検査よりmesoblastic nephromaと確定診断された.術後経過は良好であり,日齢19に退院となった.【考察】当院では,この症例も含め,胎児期に羊水過多,腎腫瘍を指摘され,出生後にmesoblastic nephromaと確定診断された症例を3例経験した.Mesoblastic nephromaでは,高レニン血症により胎児循環血漿量が増加し,羊水過多を来すことがあると報告されている.原因不明の羊水過多を認めた場合,鑑別の一つとして考慮すべきである.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
449-449, 2012
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