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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
母児間輸血症候群から見つかった胎盤内絨毛癌の1例
有澤 正義
都立大塚病院検査科
胎盤内絨毛癌はまれな疾患で報告例は少ない.今回私は母児間輸血症候群から見つけた胎盤内絨毛癌の病理像を報告する.母体は27歳,2G2Pの妊婦.34週1日で胎動減少とNRFSのため緊急帝王切開となった.児は1942gの女児,Apgar scoreは1点/5点であった.児は全身蒼白でHb値は3.1g/dLであった.母児間輸血症候群を疑い,母体のHbFとAFPの測定がされた.結果はHbF5.6%,AFP13000ng/mLで臨床的に母児間輸血症候群の診断に至った.部分交換輸血の後貧血は改善し退院となった.胎盤検査の肉眼所見は,貧血,割面での胎盤内の多数の出血,血栓であった.顕微鏡所見では絨毛の破壊像とそこからの胎児血の絨毛間への出血を診断した.さらに,小さな出血部に胎盤内絨毛癌を診断した.HbF免疫染色で絨毛間への出血が胎児血であることを証明した.絨毛癌に対してHCG,HPLの免疫染色を施行したところ,絨毛癌はHCG陽性,HPL陰性であり絨毛癌に一致する免疫染色の結果であった.本症例は病理的にも母児間輸血症候群であることを診断したばかりでなく,原因が絨毛癌であることを確定した.本症例の大切な病理的診断過程としては,4つある.1つ目は胎盤の貧血所見および絨毛間の出血部から,胎児血の可能性,絨毛癌の可能性を考える.2つ目は母児間輸血症候群の原因を検索するために多数の標本を作成したこと.3つ目は胎児血の出血部と考えたところにHbFの免疫染色を施行し胎児血の絨毛間への存在を診断したこと.4つ目は絨毛癌と考えた部位にHCGとHPLの免疫染色を施行し絨毛癌を確定したこと.以上の病理診断の過程は母児間輸血症候群の原因検索,絨毛癌の確定には必要であると考えたので報告する.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
454-454, 2012
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