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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
診断に苦慮し経腟分娩困難のため帝王切開術を要したガートナー管嚢胞の一例
叶谷 愛弓, 小島 聡子, 根井 朝美, 磯野 渉, 袖本 武男, 香川 秀之
関東労災病院産婦人科
【緒言】腟壁嚢胞の約10%を占めるガートナー管嚢胞は発生段階におけるウォルフ管の遺残から発生し,多くは小さく無症状であるが増大し症状を有することもある.今回,長年疼痛を繰り返していたが診断に苦慮し,陣痛発来時に激しい疼痛のため分娩停止となり緊急帝王切開術を要したガートナー管嚢胞の一例を経験したので報告する.【症例】29歳0経妊0経産.5年前より数ヶ月毎に排尿後に腟壁や臀部の激しい疼痛が出現するようになり,婦人科・泌尿器科・整形外科で精査するも診断がつかずに経過した.その後妊娠し徐々に痛みの程度や頻度が増悪し,激しい疼痛のため妊娠33週1日に緊急入院した.入院時腟内に明らかな異常所見なく,原因不明の腟壁・臀部痛に対して坐骨神経ブロックによる疼痛緩和を施行,軽快したため37週0日に退院した.頸管熟化は未熟なまま,妊娠39週4日陣痛発来し入院.これまでで最も激しい腟壁疼痛を認め,経腟分娩継続困難であり緊急帝王切開術となった.腰椎麻酔を施行し疼痛が消失したところで内診,腟入口部から3 cmの腟前壁正中に奥行き3.5 cmの嚢胞を認めた.帝王切開術に続いて腟壁嚢胞開窓術を施行,腟壁・臀部痛は消失した.病理診断はガートナー管嚢胞であった.【考察】診断に苦慮した激しい疼痛を伴うガートナー管嚢胞の一例を経験した.当初は小嚢胞の感染により疼痛を繰り返しており,分娩時に急激な嚢胞サイズの増大があったと考えられる.腟壁疼痛の診断にあたっては,腟壁嚢胞を念頭に置き十分な疼痛除去をした上での内診やMRI撮影が必要であると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
458-458, 2012
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