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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
抗NMDAR脳炎を発症した卵巣成熟奇形腫に腹腔鏡下手術を施行し良好な経過を得た1例
高島 明子, 竹下 直樹, 成田 達哉, 萬来 めぐみ, 安田 豊, 木下 俊彦
東邦大学医療センター佐倉病院産婦人科
(緒言)抗NMDAR抗体脳炎はglutamate receptor(GluR)の一つであるNMDARのNR1/NR2 heteromersに対する抗体を介して生ずる傍腫瘍性系脳炎である.若年女性に好発し,約6割が卵巣奇形腫である.今回,卵巣奇形腫を合併した抗NMDAR脳炎に対して,腹腔鏡下付属器切除術が有効であった一例を経験したので報告する.(症例)21歳,0経妊.嘔気,頭痛,回転性めまいを主訴に救急受診した.急速進行性の神経症状(記憶障害,不穏,興奮,意識レベルの低下,無呼吸発作,記憶障害,両下肢不随意運動,顔面ジスキネジア,下注視時眼振,構音障害)を認めた.髄液検査にてウィルス又は自己免疫性脳炎を疑われ,アシクロビル及びステロイドパルス療法,免疫グロブリン大量療法,血漿交換法を施行したが改善しなかった.全身の腫瘍,自己免疫性疾患,ヘルペスを含むウィルス検索が行われた.骨盤部MRI検査にて4cm大の右卵巣奇形腫を認めた為,第10病日に当科受診となった.卵巣血清および脳脊髄液の双方で抗GluRε2抗体および抗NMDAR抗体が陽性であった.腫瘍マーカーは正常であったが,腫瘍の内,未熟奇形腫が26%と高率に認められる事を考慮し,第16病日腹腔鏡下右付属器切除を施行した.病理所見はmature cystic teratomaであった.術後精神神経症状は急速に改善し,軽度の短期記憶障害のみとなり,術後第28病日に独歩退院した.(考察)本疾患は早期(4ヶ月以内)腫瘍切除術が有効とされ,神経学的予後の改善になると報告されている.2007年に提唱された比較的新しい疾患概念であるが,婦人科医も本疾患の周知と理解をし,腫瘍摘出については迅速な対応が必要と思われた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
467-467, 2012
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