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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
抗NMDAR脳炎の1例
堀井 真理子, 真島 実, 彦坂 慈子, 秋谷 文, 堀内 洋子, 林 良宣, 樋田 一英, 塩田 恭子, 齊藤 理恵, 山中 美智子, 百枝 幹雄
聖路加国際病院産婦人科
抗NMDAR(N-methyl-D-asparate receptor)脳炎は2007年Dalmauらによって提唱された卵巣奇形腫関連傍腫瘍性脳炎であり,抗NMDAR抗体を介して生じる自己免疫性脳炎である.今回我々は意識障害の精査で未熟奇形腫を発見し,腹腔鏡下両側卵巣嚢腫摘出術後に意識障害が改善した症例を経験したため報告する.症例は31歳,0経妊0経産.発熱等の感冒症状後に不穏状態が出現し,当院救急外来を受信.来院時,発熱と意識障害を認め,ウイルス性髄膜炎の疑いにて,抗菌薬加療を開始.入院後,脳炎の原因検索として頭部CT・MRI,脳波,髄液検査,膠原病の検索も含む血液検査を施行.感染性髄膜炎,CNSループスは臨床経過,各種検査から否定的であった.意識障害は進行し人工呼吸器管理となり,原因不明の辺縁系脳炎の疑いにてステロイドパルス療法,ガンマグロブリン投与を行い,同時に卵巣嚢腫の検索目的で当科コンサルトとなった.MRIにて両側卵巣奇形腫を認め,入院9日目に腹腔鏡下両側卵巣脳腫摘出術を施行した.術後病理組織学検査では右卵巣成熟奇形腫,左卵巣未熟奇形腫Grade1であった.入院時の血液検体より,抗NMDAR抗体陽性が判明し,診断となった.術後意識障害は継続したため,気管切開を行い,人工呼吸器管理を継続し,ガンマグロブリン療法を行った.術後2か月後ごろより意識レベルが徐々に改善し,歩行器での歩行も可能となり,現在リハビリ中である.抗NMDAR脳炎の約6割に奇形腫を合併し,このうち未熟奇形腫の割合は高いといわれている.本疾患を疑った場合,術中迅速病理検査を行い,悪性所見を認めた場合は付属器切除を考慮することも必要であると考える.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
467-467, 2012
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