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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
日本住血吸虫の虫卵を卵巣内及び直腸粘膜に認めた卵巣腫瘍の1例
早田 昌弘, 山田 美恵, 笠原 華子, 尾崎 理恵, 奥村 俊之, 大友 美由紀, 佐藤 隆之, 鈴木 正明
賛育会賛育会病院産婦人科
【緒言】日本住血吸虫は熱帯・亜熱帯で現在も流行している寄生虫であり,感染幼虫であるセルカリアが経皮的な侵入を行い肝臓や腸管への虫卵が下血や肝硬変などの病態を引き起こす.山梨県甲府盆地,千葉県利根川・小櫃川流域,静岡県沼津地方,広島県片山地方および筑後川流域などの地域に限局して流行があったが,1977年以降わが国では日本住血吸虫症の新感染者はみられない.今回我々は卵巣腫瘍の診断にて両側付属器切除を+左傍卵巣嚢腫摘出術施行後病理検査にて卵巣内及び直腸粘膜に日本住血吸虫の虫卵を認めた非常に稀な症例を経験したので報告する.【症例】82歳2経妊2経産【既往歴】40歳 開腹胆嚢摘出術,高血圧【現病歴】出身地は山梨県.健康診断にて尿鮮血指摘され,近医内科紹介受診.内科超音波にて骨盤内に約15cm大の腫瘤認められ精査のため当院紹介受診.経腟超音波上も約10cm大の腫瘤を骨盤内に認めた.当院受診時,尿鮮血消失し,尿細胞診陰性であった.MRIにてT1低信号T2高信号内部造影効果のない約15cm大の腫瘍をみとめた.腫瘍マーカーの上昇はなかった.卵巣腫瘍の診断にて手術の方針となった.開腹したところ15cm大の左傍卵巣嚢腫認めた.両側付属器切除術+傍卵巣嚢腫摘出術施行し,直腸表面に0.5cm大の白色腫瘤あり同時に切除した.病理検査は左傍卵巣嚢腫,左卵巣内及び直腸粘膜に日本住血吸虫の虫卵を認めた結果となった.精査にて陳旧性のもので治療は不要であり経過観察となった.【考察】虫卵は陳旧性のものであり今回の傍卵巣嚢腫の原因としては考えづらいが高齢者において感染症流行地域の出身の場合感染症なども考慮する必要があると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
468-468, 2012
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