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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
胸水貯留を契機とし,子宮内膜細胞診が診断に有用であった正常大卵巣癌症候群の1例
佐々木 麻帆1, 佐治 晴哉1, 小林 奈津子1, 堀田 裕一朗1, 板井 俊幸1, 田吹 梢1, 石寺 由美1, 羽成 恭子2, 服部 信1, 平吹 知雄1, 白須 和裕1
小田原市立病院産婦人科1, 小田原市立病院緩和ケア科2
【緒言】正常大卵巣癌症候群は,開腹手術時の肉眼所見に依拠した概念で,腹水貯留を認めない場合は病理学的根拠が得られず,手術療法の選択が躊躇される場合がある.今回,右胸水から異型細胞が検出され,原発性肺癌を疑うも,原発巣検索の過程で子宮内膜細胞診により正常大卵巣癌症候群を疑い,迅速に手術療法を行い得た1例を経験したので報告する.【症例】71歳女性,0経妊0経産.咳嗽を主訴に近医受診し,右胸水貯留を指摘.胸水中より異型細胞を認め原発性肺癌を疑うも,CA125 929U/mlと高値にて,当科初診となった.CT上両付属器領域の腫大や腹水貯留はなく,PET上子宮近傍のFDG集積は認めるものの,癌性胸腹膜炎の存在を疑うのみで原発巣同定には至らず.腹水貯留は認めなかったが,子宮頸部細胞診及び体内膜細胞診で腺癌を検出した.内膜細胞診では正常内膜と共に大小様々な腺癌細胞のクラスターが腺房状〜乳頭状配列を呈しており,子宮外由来の悪性腫瘍の存在を考え,正常大卵巣癌症候群を念頭に開腹手術となった.開腹所見では骨盤内から上腹部に至る微細な腹膜播種像が病変の主座であり,肉眼的には両付属器とも腫大は認めなかった.腫瘍減量手術と腹膜生検を施行し,病理学的に卵巣原発乳頭状漿液性腺癌と診断された.Subopitimal surgeryとなり,現在も化学療法を施行中である.【まとめ】腹水貯留なく,胸水貯留が主症状の場合は転移性腫瘍やびまん性悪性中皮腫等も鑑別にあがるため,原発巣の同定に難渋することが多い.本症例のように臨床的に腹水貯留を認めない段階で正常大卵巣癌症候群の病理学的根拠を得るためには,子宮内膜細胞診を有用なツールとして認識すべきであると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
480-480, 2012
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