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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
腟式単純子宮全摘術(VTH)後の後腹膜膿瘍を保存的に治療しえた一例
小野 亜希子, 佐藤 明日香, 松岡 歩, 平敷 好一郎, 伊澤 美彦
国保松戸市立病院産婦人科
【緒言】後腹膜膿瘍は稀ではあるが発生した場合治療に難渋することが多い疾患である.今回我々は子宮留膿腫を伴う子宮脱の患者に対し腟式単純子宮全摘術(VTH)および腟壁形成術を施行後,2カ月で後腹膜膿瘍を形成した症例に対し外科的ドレナージを施行せず保存的に治療しえた一例を経験したので報告する.【症例】65歳,5経妊3経産.主訴は下腹部痛および微熱であった.診察上,腟断端部に少量の膿汁流出を伴うピンホール大の裂孔を認め,超音波にて3cm大のLow echoic lesionが描出されたため,腟断端部膿瘍の診断で抗生剤処方とした.一旦症状軽快したが1カ月後再燃したため再受診となった.受診時BT 36.3℃で,血液検査上WBC 17500/mm3,CRP 12.0mg/dlと著明な炎症反応上昇を認めたため入院管理とした.MRIにて左腰筋沿いの7cm大の膿瘍陰影があり術後後腹膜膿瘍の診断となった.治療として,まずは透視下で経腟的に膿瘍のドレナージを試みたがアプローチ不可能であった.次に開腹での後腹膜ドレナージを検討したが,陳旧性膿瘍であることを考え抗生剤加療のみで保存的に治療することを選択した.CLDM 600mg/日+SBT/ABPC 6g/日を14日間施行し,血液検査上WBC 9500/mm3,CRP 1.21mg/dlと炎症反応の改善を認めたため,退院後を含め合計10日間SBT/ABPC単剤内服へ変更した.症状再燃ないことを確認し,入院後18日目に退院とした.現在,外来にて経過観察中であるが症状増悪なく画像上も膿瘍陰影は縮小していることが確認されている.【結語】VTH術後2か月以上経過した陳旧性後腹膜膿瘍を経験した.開腹によるドレナージでは治療困難と考えられた症例で,長期抗生剤投与が有効であることが示唆された.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
484-484, 2012
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