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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))
【一般演題】
術後サブイレウスの回復期にbacterial translocationによるseptic shockを呈した1例
藤井 由起子, 笹澤 智聡, 窪田 文香, 高木 緑, 戸田 文香, 山田 香織, 矢島 修, 高木 靖
諏訪赤十字病院産婦人科
【緒言】Bacterial translocation(BT)は,手術侵襲や腸管内の正常細菌叢の変化により,腸内細菌や毒素が腸粘膜バリアを超えて体内に侵入する現象で,腸管や肝臓のリンパ組織で免疫細胞を刺激し,全身性の強い炎症反応を惹起する.感染病巣が不明のまま,重症例では敗血症や多臓器不全をきたすことがある.【症例】70歳,子宮頚癌2b期(pT3aN1M0)の診断で広汎子宮全摘術を施行した.術後5日目にサブイレウスとなったが,保存的に軽快していた術後9日目に,突然39℃台の発熱を認めた.血液検査ではWBC:2420/μl,CRP:7.81mg/dlであり,感染源の検索を進めながら,広域スペクトラム抗菌薬を開始した.しかし,体温が41℃まで上昇し,収縮期血圧は70mmHgに低下してショック状態を呈したため,抗ショック療法やγ-グロブリン投与を開始した.腹腔内にはfree airを認め,腸管穿孔の可能性も考慮したが,腹膜炎の所見とは合致しなかった.明確な感染病巣は不明だったが,エンドトキシン吸着療法(PMX)/持続血液濾過透析(CHDF)による血液浄化療法も併用すると,敗血症は速やかに軽快した.血液や尿の培養検査では,腸内細菌のCitrobacter fruendiiが同定され,臨床経過からもBTの関与が示唆された.【考察】本症例では術後にサブイレウスになったが,整腸剤やGFO療法を用いて腸内環境を整えている状態での発症であり,BTによる重症感染を予測することは困難と考えられた.また,術後感染で感染巣が特定できない場合,消化管穿孔を疑って,再開腹も選択され得るが,BTも念頭に置く必要がある.特にseptic shockを疑う場合は,抗菌薬のみでなく,血管作動薬や血液浄化療法など,集中治療管理への速やかな移行が救命に寄与すると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(3)
485-485, 2012
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