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【症例報告】
腹腔鏡下子宮全摘術後に腟断端離開を起こした一例
板岡 奈央, 原田 美由紀, 平池 修, 藤本 晃久, 大須賀 穣, 矢野 哲, 武谷 雄二
東京大学医学部女性外科
腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)術後7週目に,性交を契機に腟断端離開と離開部位における小腸脱出を起こした一例を経験したので報告する.症例は44歳1経妊0経産,月経困難を主訴に39歳時に当科を受診した.子宮腺筋症を認め,月経困難症に対し保存的治療を開始したが,慢性的な骨盤痛が持続したためTLHを施行した.術中所見,術後経過に問題なく術後4日目に退院,4週間後の術後検診でも異常所見は認めなかった.7週間後に術後初回の性交をしたところ,直後より急激な下腹痛が出現したため,当院救急外来を受診した.腟鏡診にて腟断端離開と小腸脱出を認め,開腹腟断端縫合術を施行した.術中所見で腟断端の出血や感染を疑う所見はなく,脱出していた腸管の壊死も認めなかった.術後経過は順調で術後9日目に退院し,その後の術後検診でも異常は認めていない.TLHにおける腟断端離開のリスクと考え得る因子としては,腟管切開の際のパワーソース使用による組織損傷や血流不足により創傷治癒が妨げられること,鏡視下縫合のため,縫合の強度が弱くなること,比較的若年患者が多く,創傷治癒が成立する前に性交を再開することなどが挙げられる.しかし実際にTLHが腹式単純子宮全摘術,腟式単純子宮全摘術と比べ腟断端離開を起こすリスクを高めるか否か,または術式以外の他の原因が関係しているのかは,いまだ議論の余地がある.
Key words:Vaginal cuff dehiscence, Total laparoscopic hysterectomy, Sexual intercourse
関東連合産科婦人科学会誌, 49(4)
561-565, 2012
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