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【症例報告】
妊娠中に多剤耐性緑膿菌(MDRP)による腎盂腎炎を発症した一例


平田 豪, 石原 瑞葉, 上田 麗子, 佐藤 団, 竹島 和美, 笠井 絢子, 高島 邦僚, 茶木 修, 中山 昌樹
横浜労災病院産婦人科


 多剤耐性緑膿菌(Multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa,MDRP)とは,通常,カルバペネム系,フルオロキノロン系,抗緑膿菌用アミノ配糖体系の3系統の抗菌薬に対し「全て耐性」と判定された緑膿菌であり,MDRP感染症を発症した場合,確立した治療法がない.今回我々は妊娠29週にMDRPによる急性腎盂腎炎を発症した症例を経験したので報告する.【症例】37歳2回経妊1回経産.妊娠28週5日子宮収縮,腰痛,尿混濁を認め前医入院.塩酸リドドリン,セフェム系抗生物質投与されるも改善なく,妊娠29週4日当院母体搬送となった.一旦症状は落ち着いたが,妊娠30週1日に入院時の尿培養でMDRPが検出されたことが判明.しかし妊娠30週6日に発熱を認め,CAZ2 g/dayを開始したが,無効であり,妊娠31週2日AMK400 mg+AZT4 g/dayを開始.左水腎症が高度であったため,妊娠31週3日尿管ステント挿入.処置時に尿管結石が嵌頓していたことが判明し,腎盂腎炎の原因は尿路結石によるものと考えた.翌妊娠31週4日すみやかに解熱し,妊娠33週5日退院となった.【まとめ】MDRPによる妊婦の急性腎盂腎炎の一例を経験した.本症例では適切な抗菌薬の使用と物理的ドレナージが奏功したが,一般的にはMDRPに対しては確立された治療がなく,蔓延防止に努めることが重要である.

Key words:Pregnancy, Multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa, Pyelonephritis, Urolithiasis

関東連合産科婦人科学会誌, 49(4) 573-577, 2012


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