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【症例報告】
腹腔鏡下逆行性子宮全摘出術6例の経験
片山 佳代, 石寺 由美, 北川 雅一, 村瀬 真理子, 吉田 浩, 平原 史樹1)
横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科, 横浜市立大学附属病院産婦人科1)
当院では,子宮筋腫や子宮腺筋症に対し全腹腔鏡下子宮全摘出術Total Laparoscopic Hysterectomy(以下TLH)を施行している.TLHの合併症として,尿管や膀胱,腸管などの他臓器損傷が開腹より比較的多いことが知られている1).中でもダグラス窩深部内膜症や子宮体下部後壁〜頸部筋腫のTLHでは,直腸損傷に注意が必要である.今回我々は2010年4月から2011年5月の1年2か月間に当院で施行したTLH 73症例のうち,ダグラス窩閉鎖を認めた6症例に対して腹腔鏡下逆行性子宮全摘出術を施行した.5例では内膜症性の癒着によるダグラス窩閉鎖を認め,1例は子宮体下部後壁の巨大筋腫によるダグラス窩閉鎖を認めた.我々はこれらの症例に対し,子宮傍結合織の処理を終えたのちに前腟円蓋を開放,子宮腟部を頭側に牽引しながら腟内腔から後腟円蓋を切開して腟管を切断し,逆行性に子宮を摘出した.ダグラス窩深部内膜症などを有する症例のTLHでは,通常,直腸と子宮との癒着を剥離した後に子宮を摘出することが一般的である.この際,針状モノポーラーや鋏を用い癒着部をダグラス窩方向へ切断・剥離することによる直腸損傷について懸念されるが,今回我々はこの術式により比較的安全にTLHを施行することができた.
Key words:Total laparoscopic retrograde hysterectomy, Douglas adhesion, Endometriosis
関東連合産科婦人科学会誌, 49(4)
579-587, 2012
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