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【症例報告】
先天梅毒の一例


上西園 幸子, 須郷 慶信, 祐森 明日菜, 佐藤 玲南, 鈴木 幸雄, 川野 藍子, 大井 由佳, 鈴木 理絵, 武居 麻紀, 安藤 紀子, 茂田 博行
横浜市立市民病院産婦人科


 【背景】梅毒感染症は本邦において2004年以降再度増加傾向であり,梅毒感染を疑う場合や梅毒ハイリスク妊娠には,妊娠初期検査施行後でも母子感染予防目的に梅毒再検査の必要性が指摘されている.今回我々は母体血液検査と胎児超音波所見から出生前より先天梅毒を疑い出生後早期に診断・治療に至った一例を経験したので報告する.【症例】39歳,3経妊2経産.妊娠28週までインドネシアで妊婦健診を行っていたが梅毒は検査されていなかった.妊娠29週1日,日本に帰国し前医を初診した.31週4日妊婦健診時に腹緊,性器出血,頸管長短縮を認め切迫早産の診断で入院した.子宮収縮抑制剤,抗生剤投与開始されるも胎児心拍異常が出現したため31週5日当院に母体搬送された.当院での母体血液検査でRPR,TPHA陽性であり梅毒感染症と診断した.胎児超音波検査にて肝脾腫を認め先天梅毒が疑われた.胎児well-being評価ではCTGでlate decelerationを認め,BPS4点でありNRFSと診断した.同日緊急帝王切開術を施行し1,782 g,男児を娩出,UApH 7.202,BE -7.3,Apgar score 1分値4点,5分値5点であった.術後1日目,母体は無症候性梅毒感染症と診断され,Penicillin Gの8週間内服を開始した.出生児には水疱性皮疹,肝脾腫,血小板減少,貧血,骨端軟骨炎が認められ,FTA-ABS IgM陽性のため先天梅毒と診断した.また,胎盤病理検査で胎盤内にスピロヘータを確認し先天梅毒を裏付けるものとなった.【結語】母体血液検査と胎児超音波所見から出生前より先天梅毒を疑い,児娩出後早期に診断・治療に至った一例を経験した.梅毒母子感染予防のために,妊娠初期検査のほかにも梅毒ハイリスク妊婦の場合には梅毒再検査を検討する必要があると考えられた.

Key words:Syphilis, Treponema pallidum, Congenital syphilis, Jarisch-Herxheimer reaction, Hepatomegaly

関東連合産科婦人科学会誌, 49(4) 615-620, 2012


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