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【特集】
臍腫瘍を契機に診断された成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化の一例


平山 貴士, 野島 美知夫, 笠原 華子, 長井 咲樹, 中原 万里子, 濱村 憲佑, 上山 和也, 窪 麻由美, 白井 洋平, 鈴木 千賀子, 田嶋 敦, 吉田 幸洋
順天堂大学浦安病院産婦人科


 成熟嚢胞性奇形腫は卵巣腫瘍の中でも最も頻度が多く,全卵巣腫瘍の10〜20%と言われており,その悪性転化は1〜2%で稀である.また,内臓悪性腫瘍の臍転移を総称してSister Mary Joseph’s Nodule(以下SMJN)と言い,その頻度は内臓悪性腫瘍の転移全体の1〜2%であり予後不良の兆候として知られている.今回,我々は臍腫瘍を契機に診断された成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化の一例を経験したので報告する.症例は63歳女性2経妊2経産,5年前に健診で成熟嚢胞性奇形腫を指摘され,手術をすすめられたが拒否し,5年間外来受診しなかった.受診2か月前より臍部腫瘤自覚し,皮膚科受診し生検したところ扁平上皮癌の診断で,原発巣検索目的で当科紹介受診.精査の結果,成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化とSMJNの疑いで,腹式単純子宮全摘術,右付属器切除術,臍腫瘍摘出術,筋膜形成術を施行した.病理結果で右卵巣成熟嚢胞性奇形腫より扁平上皮癌を認め,悪性転化と臍転移の診断となった.成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化は,腫瘍径10 cm以上や50歳以上のもので疑われ,その診断にはSCC高値が診断に有用であると言われている.卵巣外への進展を認める場合予後不良であり,初回手術時の残存腫瘍の有無が予後に関連してくると考えられた.また,SMJNは出現後の予後が約10か月程度と予後不良ではあるが,卵巣癌原発のSMJNは他の内臓癌と比較すると化学療法も効きやすく予後は良好とする報告もあり,早期発見と外科的手術,術後化学療法が予後を改善するものと考えられた.

Key words:Malignant transformation of mature cystic teratoma, Umbilicus metastasis, Sister Mary Joseph’s Nodule

関東連合産科婦人科学会誌, 49(4) 659-664, 2012


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