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【原著】
婦人科癌化学療法における新規制吐剤(アプレピタント,パロノセトロン)の使用経験
松岡 知奈*, 關 壽之*, 新美 茂樹, 宇田川 治彦, 川畑 絢子, 鈴木 二郎, 石井 晶子, 鈴木 美智子, 松本 隆万, 落合 和彦, 田中 忠夫*
東京慈恵会医科大学附属葛飾医療センター産婦人科, *東京慈恵会医科大学付属病院産婦人科
癌化学療法における悪心・嘔吐(CINV)は患者のQOLを下げ,時に治療の完遂を妨げることもありその対策は急務である.パロノセトロンは第二世代5-HT3受容体拮抗薬であり,またそれとは異なった作用機序で制吐作用を発揮するアプレピタントも特に遅発性の悪心・嘔吐に対して効果的であることが報告されている.今回我々はアンケートを用いてこれらの効果を従来の制吐剤と比較・検討した.対象は2010年10月から2011年1月にかけて当院でカルボプラチンを含む癌化学療法を行った婦人科癌患者21人である.これまでに当院で施行してきた制吐剤の投与法(従来法)と,新規制吐剤を含んだ投与法(新規法)による制吐効果を嘔吐完全抑制率(CR率)にて比較・検討した.アンケートの対象期間となる化学療法後10日間を急性期(24時間以内),遅発期前期(前期:2〜4日目)ならびに,遅発期後期(後期:5〜10日目)に分けて検討した.CR率は3期間いずれにおいても有意差は認めなかった.新規法は急性期のみならず遅発期においても効果的ではあるものの,後期ではCR率が有意に低下し,5日目以降に制吐効果が及んでいない可能性が示唆された.一方,従来法では効果の低かった症例の中には新規法が有効である場合を認めており,ASCO,NCCNといった主要学会の催吐リスク分類における中等度リスク群(以下MEC)におけるCINV予防の各ガイドラインを踏襲することは必要であるが,それでもCINVのコントロールが困難な症例では催吐リスク分類における高度リスク群(以下HEC)に準じた方法による改善を期待することも選択肢の一つであると思われた.
Key words:chemotherapy, antiemetics, aprepitant, palonosetron
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
5-11, 2013
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