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【症例報告】
子宮動脈塞栓術により救命しえた子宮摘出困難な分娩後大量出血の2例
安達 将隆, 山田 満稔, 峰岸 一宏, 浅田 弘法, 田中 守, 青木 大輔, 吉村 𣳾典
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
止血制御としての子宮摘出が困難であった帝王切開時の大量出血に対し,子宮動脈塞栓術(Uterine Artery Embolization;以下UAE)が有効であった2例を経験したので,文献的考察も含めて報告する.症例1は44歳,0経妊0経産.子宮内膜症性囊胞・子宮筋腫合併.体外受精にて妊娠成立し,妊娠23週に超音波断層検査で全前置胎盤と診断.妊娠37週2日,帝王切開術を施行した.術中出血量は約3,000 ml.閉創後,弛緩出血によりショック状態となった.内膜症性癒着によるダグラス窩完全閉鎖のため,子宮摘出は困難と判断.UAEを施行し,出血量は減少した.症例2は42歳,4経妊2経産.子宮筋腫核出術.帝王切開術の既往あり.子宮筋腫・子宮腺筋症合併.MRI検査で,胎盤は子宮前壁の子宮腺筋症部位に接して付着.38週2日,帝王切開術を施行.子宮収縮不良により出血が持続し,出血量は約10,000 ml.子宮筋腫や子宮腺筋症,強固な腹腔内癒着のため子宮摘出は困難と考え,UAEを施行し,出血量は減少した.子宮摘出困難な分娩後大量出血における緊急UAE施行は,止血制御に有用かつ,母体救命戦略の一助となることが示された.
Key words:postpartum hemorrhage, placenta previa, disseminated intravascular coagulation, uterine artery embolization
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
63-68, 2013
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