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【症例報告】
卵巣腫瘍との鑑別が困難であった腸間膜囊腫の一例
石井 茉衣, 粒来 拓, 鈴木 幸雄, 小畑 聡一朗, 川野 藍子, 青木 茂, 鈴木 理絵, 武居 麻紀, 安藤 紀子, 林 宏行*, 茂田 博行
横浜市立市民病院産婦人科, *同 病理診断科
腸間膜囊腫とは,腸間膜に発生する囊胞性腫瘍の総称で稀な疾患である.今回我々は,卵巣腫瘍疑いで経過観察中に合併した腸閉塞のため緊急開腹術を実施し,腸間膜囊腫と判明した症例を経験したので報告する.症例は67歳.2回経妊0回経産.腹痛の主訴で近医内科を受診し,腹部CT検査で卵巣腫瘍を疑われ,当科紹介受診となった.腫瘤は経腟超音波検査にて径25 cmであった.腫瘤の内部に腸管が蠕動運動しているような所見があり,同部位に血流を伴っていたが,MRI検査では卵巣腫瘍が疑われた.画像診断では悪性を示唆する所見はなく,腫瘍マーカーも陰性であったため,患者の希望により経過観察の方針とした.初診より7か月後に下腹部痛と嘔吐を主訴として当院救急外来を受診し,腹部Xpと腹部CT検査で腸閉塞と診断した.腸閉塞の原因として,骨盤内腫瘍性病変の関与を疑い緊急開腹術を行ったところ,腸間膜囊腫と判明した.術後経過は良好で,術後13日目で退院となった.腸間膜囊腫は一般に特異的な症状に乏しく,画像所見上も特徴的な所見に乏しいため,その診断は困難であるが,卵巣腫瘍の鑑別診断の一つとして考慮する必要があると思われた.
Key words:mesenteric cyst, ovarian tumor
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
77-81, 2013
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