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【症例報告】
卵管原発明細胞腺癌の一例
佐薙 佳世1), 高野 浩邦1), 田部 宏1), 矢内原 臨1), 高倉 聡1), 山田 恭輔1), 佐々木 寛1), 池上 雅博2), 岡本 愛光1)
東京慈恵会医科大学産婦人科学講座1), 東京慈恵会医科大学病理学講座2)
卵管癌は女性性器悪性腫瘍の中でも0.14%〜1.8%と稀な腫瘍で,組織型は漿液性腺癌が多く,明細胞腺癌を認めることは稀である.今回我々は,卵管原発の明細胞腺癌の一例を経験したので報告する.症例は64歳5経妊4経産,腹部膨満感と不正性器出血を主訴に前医を受診.腹水貯留と子宮内膜細胞診疑陽性のため当院を紹介受診となる.子宮頸部,内膜細胞診は陰性で,腹水細胞診で腺癌を疑う異型細胞が認められた.骨盤MRIでは,両側の萎縮した卵巣が確認され,右卵巣付近に拡散強調画像で高信号を示す35 mm大の腫瘤が認められ卵管の悪性腫瘍が疑われた.以上より,右卵管癌の術前診断のもと開腹手術を施行.開腹所見は,子宮は鶏卵大で両側卵巣は萎縮しており,右卵管が直径4 cm大に腫大していた.開腹所見でも卵管癌と診断し,単純子宮全摘,両側付属器摘出,大網部分切除,リンパ節郭清(骨盤〜傍大動脈)を施行した.病理組織学的診断は卵管明細胞腺癌であった.術中腹水細胞診陽性であり,対側卵巣表面に浸潤性インプラント像を認めたため,FIGO進行期IIc期,pT2cN0M0(TNM分類)と診断した.術後補助化学療法として,dose-dense Paclitaxel/Carboplatin療法を6コース施行し,術後22カ月経過した時点で,再発兆候は認めていない.卵管原発明細胞腺癌は極めて稀であるため,当院で経験した1例の経過をここに報告する.
Key words:Fallopian Tube Cancer, Clear Cell Adenocarcinoma
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
105-111, 2013
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