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【症例報告】
感染性流産に至った結核合併妊娠の一例
野村 由紀子, 丸山 大介, 幸本 康雄, 吉野 佳子, 神保 正利
公益財団法人東京都保健医療公社荏原病院産婦人科
今回我々は結核菌の血行性子宮内感染から流産に至った症例を経験したので報告する.30歳2回経産.妊娠判明の3か月前に右肺炎にて他院内科で精査治療歴があり,クォンティフェロン®TB-2G(QFT)検査高値も結核菌は検出されず経過観察となっていた.妊娠9週3日に妊娠分娩管理依頼目的で当院へ紹介初診.妊娠13週0日に性器出血と発熱を訴え受診.中等量の血性帯下と,CRP 4.5 mg/dlと炎症反応を認め,感染を伴う切迫流産と診断した.通院治療では改善せず妊娠15週2日に入院となった際,数日前からの呼吸苦出現を訴えたため,血液ガス検査を施行しPaO2 51.0 mmHgと低酸素血症であった.胸部Xp・CTでは両肺にびまん性に分布する粟粒大粒状影,胃液から結核菌PCR陽性,子宮血性帯下からガフキー2号を認め,肺結核および血行性子宮内感染による切迫流産と診断した.妊娠15週4日より抗結核剤3剤併用療法を開始し解熱したが,血液を混じた水様性帯下は持続.次第に羊水過少となり,妊娠18週3日に陣痛発来し自然流産に至った.長期間の出血と流産時出血により重症貧血に至ったため輸血を施行し流産後5日目に退院となった.感染兆候を伴う切迫流産においては,結核も鑑別診断の一つとして念頭におく必要があり,特に呼吸器症状を有する場合や問診にて結核感染のハイリスクと考えられる場合は,妊娠初期でも積極的に結核の検査を行う必要があると考えられた.
Key words:tuberculosis, pregnancy, abortion
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
123-127, 2013
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