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【症例報告】
適切な血糖管理により良好な経過をたどった糖原病Ia型合併妊娠の一例
村山 真治1), 松本 直1), 伊藤 嘉佑子1), 宮越 敬1), 峰岸 一宏1), 田中 守2), 青木 大輔1), 吉村 𣳾典1)
慶應義塾大学産婦人科1), 聖マリアンナ医科大学産婦人科2)
糖原病はグリコーゲン代謝に関与する酵素の遺伝的欠損により肝臓および筋肉を中心にグリコーゲンが病的に蓄積して臓器障害を引き起こす疾患である.特に糖原病の大部分を占めるIa型では低血糖予防が治療の中心となる.発症頻度は数万人に1人と極めて稀な疾患であるため,本疾患合併妊娠例の報告は少ない.症例は34歳,0経妊0経産.4歳時に腹部膨満および歩行障害を初発とし,低血糖発作,蛋白尿,高脂血症,肝腫大などの所見から糖原病Ia型と診断された.以後,臨床症状は安定していたが,今回自然妊娠成立に伴い周産期管理目的で当院産婦人科紹介受診となった.妊娠7週時に持続血糖測定を施行したところ,就寝中の低血糖が判明したため,補食および就寝前のコーンスターチ(100 g)を含めた食事療法を開始した.その後,低血糖症状なく経過良好であったが,妊娠36週時に加重型妊娠高血圧腎症を発症した.臨床症状の増悪および分娩前後の代謝性アシドーシス回避を目的とした厳重な血糖管理の必要性から,選択的帝王切開術に至った.産後もコーンスターチによる低血糖予防を継続し良好な転帰であった.また,児の経過も良好であった.
Key words:glycogen storage disease, pregnancy, perinatal management
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
129-134, 2013
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