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【症例報告】
尋常性ざ瘡の治療に使用したスピロノラクトンが,月経随伴症状の緩和に有効であった子宮腺筋症の1例


栗下 昌弘1), 加藤 理恵子1), 鳥羽 三佳代2)
国家公務員共済組合連合会東京共済病院婦人科1), 東京医科歯科大学産婦人科2)


 スピロノラクトンは,抗アルドステロン性利尿・降圧剤として,高血圧症,うっ血性心不全などの疾患において頻用されている薬剤である.尋常性ざ瘡に奏功することが報告されて以来,皮膚科や婦人科での使用頻度も増加している.子宮腺筋症の管理中に,皮膚科クリニックで再発を繰り返す尋常性ざ瘡にスピロノラクトンが投与され,過多月経,月経痛が著明に改善された症例を報告する.症例は43歳既婚,未産婦で挙児希望なし.他院で子宮腺筋症と診断され,GnRHa(gonadotropin releasing hormone agonists)を施行されたが再燃し,転院後に低用量ピル,ダナゾール,ジェノゲストを投与されたが,いずれも副作用のため中止.過多月経,激しい月経痛を主訴に当科初診.子宮全摘除術を勧めたが,NSAIDs(nonsteroidal anti-inflammatory drugs)による待機療法を希望した.皮膚科クリニックにて,尋常性ざ瘡に対してスピロノラクトンが処方され,その後は激しい月経随伴症状は著明に軽減され,NASIDsは使用せずに経過した.皮膚科では,本症例を含め10例の尋常性ざ瘡例に使用し,5例が顕著な月経痛の改善をみている.スピロノラクトンと月経随伴症状に関する文献は皆無であるが,同薬剤がプロゲステロン作用,抗エストロゲン作用を有することを示唆する文献から,卵巣機能抑制による効果発現と考えられる.安全性の高い薬剤で,骨量減少を抑制する作用もあり,今後,月経困難症の改善薬となりうる可能性が示された.

Key words:spironolactone, acne vulgaris, dysmenorrhea, menorrhagia

関東連合産科婦人科学会誌, 50(1) 135-142, 2013


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