|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【症例報告】
帝王切開中に発症したラテックスアナフィラキシーショックの1例
宮田 あかね1)2), 松野 香苗1), 中野 真1), 高野 浩邦3), 岡本 愛光3), 木村 英三1)
立正佼成会附属佼成病院産婦人科1), 東京歯科大学市川総合病院産婦人科2), 東京慈恵会医科大学病院産婦人科3)
妊娠管理中,内診時の手袋・経腟エコープローブカバーなどラテックス含有物の使用では無症状で経過したが,分娩停止による緊急帝王切開中にラテックスが原因と思われるアナフィラキシーショックを起こし,低血圧症状だけでなく,喉頭浮腫を含む全身浮腫のため重篤な低酸素血症を生じた症例を経験した.気管内挿管とステロイド投与を速やかに施行したが低酸素状態の改善はなく,エピネフリン投与により症状が改善した.術後の調査でアナフィラキシーの原因は術中に使用したラテックス手袋であることが推察された.日常的な診察による経皮的抗原暴露では症状が起きなくても,開腹手術による観血的操作やバリア機能のない腹膜に直接接触することで抗原暴露量が圧倒的に増加した場合,アナフィラキシーショックを起こし重症化する可能性がある.医療従事者など職業上でのラテックスへの頻回の暴露経験者,またはラテックスによる接触性皮膚炎の既往,複数回の手術の既往,アトピー体質,果物アレルギーの既往などがある患者はラテックスアレルギーのハイリスクグループである.詳細な問診はラテックスアレルギーの診断に有用であり,ハイリスクグループでは,ラテックスアレルギーを疑いラテックスフリーでの処置を行うことが重要である.
Key words:latex, Anaphylaxis, Caesarean section, Tracheal intubation
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
149-154, 2013
|