|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【症例報告】
HSV感染が発症誘因と考えられた妊娠中赤芽球癆の1例
鬼塚 真由美1), 中村 礼子1), 尾臺 珠美1), 吉田 卓功1), 羅 ことい1), 栗田 郁1), 藤岡 陽子1), 後藤 亮子1), 市川 麻以子1), 遠藤 誠一1), 坂本 雅恵1), 島袋 剛二1), 宮坂 尚幸2)
土浦協同病院産婦人科1), 東京医科歯科大学小児・周産期地域医療学寄附講座2)
【目的】赤芽球癆(pure red cell aplasia)は正球性正色素性貧血と網赤血球,骨髄赤芽球の著減を特徴とする症候群である.今回我々は妊娠中にHSV感染に伴う肝炎を発症し急性赤芽球癆を発症した症例を経験したので報告する.【症例】36歳1経妊1経産.妊娠20週より全身瘙痒感と頸部リンパ節腫脹あり,内科と皮膚科を受診し経過観察されていた.妊娠22週より38℃台の発熱あり,妊娠25週の妊婦健診で全身の黄疸を指摘され当院を紹介受診.D-bil優位の黄疸,GOT, GPT, LDHの上昇を認めた.HSV IgMが陽性で,急性肝炎の原因としてHSV感染が疑われた.ウルソデオキシコール酸内服開始後Bil,肝酵素は速やかに正常化したがPlt, Hb, WBCが低値を示しHSV感染による血球貪食症が疑われた.その後Plt, WBCは自然軽快したがHb 5.2 g/dl,網赤血球1/‰と赤血球系のみ造血障害を認めた.骨髄穿刺塗抹標本では赤芽球系前駆細胞のみ減少を認め,赤芽球癆と診断され,PSL投与と赤血球輸血を行った.貧血は徐々に改善し,妊娠40週1日で正常経腟分娩となった.【考察】赤芽球癆は免疫学的異常を背景として発症するといわれる.本症例では,肝炎や妊娠に伴う免疫機能の変化が発症に関与した可能性が大きいと考えられる.妊娠中に重篤な貧血をきたした場合は赤芽球癆も鑑別診断の一つに挙げる必要がある.
Key words:Pure red cell aplasia, HSV, Pregnancy, Hepatitis, Anemia
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
161-166, 2013
|