|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【特集】
弛緩出血に対しB-Lynch変法が有効であった1例
谷口 真紀子, 後藤 妙恵子, 野木 才美, 西尾 浩, 森定 徹, 真壁 健, 中村 加奈子, 玉田 裕
国家公務員共済組合連合会立川病院産婦人科
緒言)弛緩出血は全分娩の約5%にみられ,時に子宮摘出術も必要となるが,妊孕性温存希望がある場合,その対応に苦慮する.今回我々は弛緩出血に対しB-Lynch変法により子宮収縮を継続させ止血し得た症例を経験したので報告する.症例)35歳,0経妊0経産.妊娠経過は順調で,妊娠41週4日陣痛誘発にて経腟分娩に至った.しかし胎盤自然剝離認めず,用手剝離を試みるも胎盤を娩出し得なかった.その後外出血の増量を認めたため,開腹子宮体部切開にて胎盤摘出を図った.胎盤剝離後,子宮収縮不良のためオキシトシンを子宮筋層に局注し筋層縫合した.縫合後子宮弛緩状態になり,子宮体部輪状マッサージや各種薬剤投与を行うも子宮収縮は持続しなかった.オキシトシンを再度子宮筋層に局注し良好な収縮を得た状態で,子宮切開創の下方で子宮後壁から前壁に向けてVICRYL Rapid®1号針糸を通し,底部を巡らせて結紮した.この縫合を左右両側性に行い,結紮糸が側方に滑脱しないように左右結紮糸を中央で3か所固定した.術後異常出血を認めることなく,子宮収縮は維持されていたため,術後8日目退院に至った.考案)子宮筋層縫合後の弛緩出血に対しB-Lynch変法にて圧迫縫合を行い,持続する子宮収縮を得た.圧迫縫合では前後子宮壁を貫く縫合糸により子宮腔内の癒着・不妊症が問題となるため,今後も慎重な経過観察が必要と考える.
Key words:atonic bleeding, B-Lynch, modified compression suture
関東連合産科婦人科学会誌, 50(1)
207-211, 2013
|