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【特集】
29週2日交通外傷にて胎児機能不全,帝王切開術後に子宮摘出となった1例


寺岡 香里1), 木村 博昭1), 羽生 裕二1), 松岡 歩1), 神山 正明1), 大曽根 義輝2), 小林 壮一3), 北村 伸哉4)
君津中央病院産婦人科1), 同 新生児科2), 同 外科3), 同 救急・集中治療科4)


 本邦では年間6,000人以上の妊婦が交通外傷に遭い,妊婦の交通事故死は年間20人程度とされる.今回,交通外傷で胎児機能不全に至り,緊急帝王切開を施行した症例を経験したので報告する.症例は23歳1経妊0経産.他院で妊娠管理され,妊娠経過は順調であった.妊娠29週2日,乗用車対乗用車の正面衝突事故で受傷(患者は助手席に乗車,シートベルト着用あり)し,当院に救急搬送された.バイタルサイン,頭部CT,腹部超音波,骨盤レントゲンで異常は認めなかった.胎盤肥厚,性器出血,腹部硬直なども認めなかったが,胎児心拍モニターでvariability消失,頻発する胎児徐脈を認めたため緊急帝王切開術を施行した.子宮下部横切開時に血性羊水の流出を認め,1,308 g Apgar score 0/1点で女児娩出した.子宮筋層縫合後も腟からの出血が多く,更に後腹膜血腫の増大も認めたため,腟上部切断術を施行し,タンポンガーゼ3枚で後腹膜を圧迫し閉腹,気管挿管下にICU管理となった.術中・術後の総輸血量は,赤血球濃厚液30単位,新鮮凍結血漿24単位,濃厚血小板10単位であった.第2病日,再開腹しタンポンガーゼを抜去し止血を確認した.児は出生後4日に多臓器不全で死亡した.第31病日退院となった.本症例は交通外傷という高エネルギー外傷により胎児機能不全を起こしたと考えられた.妊婦の外傷では母体・胎児の迅速な評価と,的確な検査・治療の決断が必要である.

Key words:traffic injury, non-reassuring fetal status, uterine rupture

関東連合産科婦人科学会誌, 50(1) 227-231, 2013


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