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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))

【教育セミナー2】
卵子幹細胞研究の現状と未来


高井 泰
埼玉医科大学総合医療センター産婦人科


卵巣組織からの卵子幹細胞(OSCs)の分離  最近,複数の施設から,ショウジョウバエやメダカ同様に,マウス成体卵巣中にも少数の増殖可能な生殖細胞が存在し,卵子さらには産仔を生成しうることが報告され1,2),ヒト成人の卵巣からも増殖可能な卵子幹細胞(oogonial stem cells;OSCs)が分離された3).  GFPで標識したヒトOSCsをヒト卵巣組織片に注入し,この組織片を免疫抑制マウスに異種移植すると,GFP陽性細胞を扁平な細胞が取り囲んだ原始卵胞が形成された.倫理的・法的理由からヒトOSCsから得られた卵子をヒト精子と受精させることはできなかったが,従来の分離法で得られたマウス卵子幹細胞をGFPで標識して不妊マウスの卵巣に注入したところ,GFPを発現する産仔が得られている2).  以上の知見はヒト卵巣組織からヒトOSCsが分離・同定され,卵子が産生されることを強く示唆している.また,ヒトOSCsは数ヶ月以上にわたって分裂・増殖が可能であり,雌性生殖細胞は出生後に増殖しないという従来の学説の変更を迫る画期的な発見でもある.  更に最近,若年マウスの卵子に比べて加齢マウスの卵子の方が,受精卵からの細胞分裂回数が有意に多いことが報告された4).この現象に対する説明として,「卵子幹細胞」仮説では,生殖細胞における体細胞分裂は卵子幹細胞において出生後も継続しており,卵子幹細胞の分裂による卵子新生が行われているためと考えられている5)ES細胞やiPS細胞からの卵子幹細胞の作成  卵巣組織からの卵子幹細胞の発見に続いて,マウス胚性幹細胞(ES細胞)やマウス人工多能性幹細胞(iPS細胞)からも卵子幹細胞(始原生殖細胞;PGC)が産生され,得られた卵子から産仔が得られたと報告された6).本研究では,雌マウスES細胞を,エピブラスト様細胞(EpiLCs)を経て,始原生殖細胞様細胞(PGCLCs)に分化させた.得られたPGCLCsを12.5日齢のメス胎仔性腺から分離された体細胞と共培養し,免疫不全マウスの卵巣嚢中に移植したところ,PGCLCs由来のGV期卵子を持つ卵胞が形成された.このPGCLCs由来GV期卵子のin vitro maturationによってMII期成熟卵子を得て,PGCLCs由来の産仔を得た.同様の方法によって,iPS細胞由来のPGCLCsからも産仔を得ることができた. 卵子幹細胞のARTへの応用  ヒト卵子幹細胞由来の原始卵胞を2ステップ無血清卵胞培養法7)によって培養・発育させ,卵子を単離し,in vitro maturation(IVM)によってヒトMII期成熟卵子を得ることが計画されている.一方,卵子幹細胞のin vitro培養によって卵子が分化・産生される分子メカニズムが解析され,卵子の産生や質に影響する因子を同定・評価することが期待される.更に,患者自身から得られたヒト卵子幹細胞のミトコンドリアやその活性化因子を顕微授精時などに注入することによって,卵子の質を改善し,ART成功率を上昇させることが計画されている8).  今後,卵巣組織由来の卵子幹細胞やES細胞・iPS細胞由来の始原生殖細胞を用いた生殖医学の研究の成果への期待が高まる中,どの段階までの研究が認められるのか,具体的な幅広い議論が必要だろう9)文献 1.J. Johnson et al., Nature428, 145, 2004. 2.K. Zou et al., Nat Cell Biol11, 631, 2009. 3.Y. A. White et al., Nat Med18, 413, 2012. 4.Y. Reizel et al., PLoS Genet8, e1002477, 2012. 5.D. C. Woods et al., PLoS Genet8, e1002848, 2012. 6.K. Hayashi et al., Science338, 971, 2012. 7.E. E. Telfer, M. McLaughlin, Semin Reprod Med29, 15, 2011. 8.D. C. Woods, J. L. Tilly, Fertil Steril98, 3, 2012. 9.高井泰,臨床婦人科産科67, 172, 2013.


関東連合産科婦人科学会誌, 50(2) 296-297, 2013


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