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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))
【若手ポスターセッション6】
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)により出血性脳梗塞をきたした子宮体癌の1例
中島 恵子1, 鈴木 啓太郎1, 山下 修位1, 大野田 晋1, 伊藤 ひとみ1, 森川 あすか1, 關 壽之1, 柳田 聡1, 礒西 成治1, 岡本 愛光2
東京慈恵会医科大学第三病院産婦人科1, 東京慈恵会医科大学産婦人科2
【はじめに】抗凝固薬ヘパリンにより稀に血栓塞栓症を引き起こすことがある.その病態は主に抗PF4-ヘパリン複合体抗体が関与しているといわれ,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)として解明されつつある.今回我々は子宮体癌術後にHITを発症し,出血性脳梗塞により死亡した1例を経験したので報告する.【症例】59歳女性,高血圧症,高脂血症,2型糖尿病の既往歴あり.子宮体癌の診断のもと拡大子宮全摘出術+両側付属器摘出+骨盤内リンパ節郭清術を施行した.endometrioid adenocarcinoma Grade1,pT2N0M0,FIGO分II期と診断され,化学療法の予定であった.術後4日目よりエノキサパリンナトリウムを3日間投与.術後10日目に外泊先で左上下肢のしびれ,左口角下垂が出現し,緊急帰院となった.頭部CT,MRIにて右中大脳静脈領域の出血性梗塞と上矢状静脈洞血栓症が認められ,血小板数は2.4x104/μlと著しく低下,HIT抗体強陽性であり,HITと診断した.アルガトロバンの投与を開始し,集中治療室にて厳重管理としたが,脳ヘルニアの進行により発症5日目(エノキサパリンナトリウム投与12日目)に死亡した.【考察】抗凝固薬ヘパリンは手術症例やDIC,血栓塞栓症の治療薬,予防を目的として日常的に投与される薬剤である.HITのうち特に重篤化するTypeIIの頻度はヘパリン投与患者の2-3%で女性に多く,BMI高値,糖尿病既往,悪性腫瘍術後などがリスク因子とされており,ヘパリン投与の際には血小板値の推移に注意し,早期の対応が重要であるといえる.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(2)
325-325, 2013
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