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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))
【若手ポスターセッション6】
貧血補正によって発症したPosterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)の1例
新井 友香梨1, 菅 直子1, 佐野 靖子1, 塩澤 正之1, 藤岡 志水1, 坂本 昇子1, 矢田 昌太郎1, 田中 里美1, 阿部 弥生1, 太田 剛志1, 小倉 加奈子2, 荻島 大貴1
順天堂大学医学部付属練馬病院産婦人科1, 順天堂大学医学部付属練馬病院病理2
【緒言】Posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)は頭痛,意識障害,精神症状,痙攣などを臨床症状とした可逆性の疾患で,頭部MRIのT2強調画像,FLAIR画像で後頭葉白質に高信号を示す.基礎疾患として高血圧,子癇,免疫抑制剤の使用等があり,これを背景に血管内皮細胞の障害,血液脳関門の破綻が起こり血管原性浮腫が生じると考えられている.【症例】57歳女性,1経妊1経産.1年半以上前より続く不正性器出血と倦怠感を主訴に受診した.診察上多量の性器出血を認め,子宮頚癌が疑われた.採血でHbは2.0g/dlであり,緊急入院し輸血を行った.4日間で濃厚赤血球を計10単位緩徐に投与しHbは8.2g/dlまで回復した.性器出血も少量となり外来での精査予定とし退院した.しかし,退院翌日急激に発症した意識障害(E4V1M3),痙攣,呼吸障害のため救急搬送され再入院となった.集中治療室での人工呼吸器管理のもと,頭部CTを施行したが大きな異常は認めなかった.翌々日,呼吸状態は改善し人工呼吸器より離脱した.頭部MRIのT2強調画像及びFLAIR画像で両側後頭葉を中心に浮腫性変化を認めPRESと診断した.その後,経過観察で意識レベルは徐々に回復し,12日後に施行した頭部MRIでは前述の所見は消失した.子宮頚癌は低分化型腺癌stageIVb(傍大動脈リンパ節転移)であり現在化学療法中である.【考察】産婦人科領域では子癇によるPRESが知られているが,本症例では長期間の重症貧血を比較的短期間で補正したことによりPRESが発症したと考えられる.PRESの予後は一般的に良好のため,特徴的な臨床症状と誘因が認められた際にはPRESを考慮し迅速な画像診断と原因除去を含む治療が重要である.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(2)
326-326, 2013
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