|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))
【若手ポスターセッション7】
子宮頸癌との鑑別を要した子宮頸部放線菌症の一例
堀江 健司, 竹井 裕二, 野中 宏亮, 木村 歩未, 溝口 由香子, 町田 静生, 藤原 寛行, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科
【緒言】放線菌症はグラム陽性嫌気性菌の一種であるActinomyces属が原因で発症する慢性化膿性肉芽腫性疾患である.放線菌症に伴う腫瘤病変は時に悪性腫瘍との鑑別を要し,婦人科領域では子宮体部に形成されることが多い.今回我々は,子宮頸癌との鑑別を要した子宮頸部放線菌症の症例を経験したので報告する.【症例】62歳,3経妊2経産.42歳から60歳までIUDを使用していた.1年以上前から持続する不正性器出血の増加を主訴に前院を受診し,子宮頸管内に腫瘤性病変を指摘された.子宮頸部細胞診は陰性であったが,MRIを施行したところ子宮頸管内に腫瘤を認め,悪性腫瘍(子宮頸癌IB1期)が疑われ当院に紹介となった.内診で子宮腟部は易出血性で表面不整であったが明らかな腫瘤を認めず,超音波にて内頸部の腫大があるのみであった.診察および画像所見より,当院でも子宮頸癌を疑い細胞診と組織診を行ったが,いずれも陰性であった.しかし腟内帯下に認めた黄色の粒状組織を病理学的に検索したところ,同組織は放線菌塊であったため,放線菌症による頸管内腫瘤と診断した.アモキシシリン1日1500mgの内服を開始,2カ月後の内診では少量の出血はあるが帯下は減少し,超音波検査およびMRIでは子宮頸管内の腫瘤は著明に縮小した.現在も抗菌薬による治療を継続中である.【考察】放線菌感染により子宮頸部に腫瘤を形成し,画像上子宮頸癌が疑われた症例を経験した.放線菌症は子宮体部だけでなく子宮頸部にも起こりうること,IUD挿入中だけでなくIUD抜去後1年以上経過しても起こりうることも念頭に入れなくてはならない.診断は放線菌の菌塊を見つけることであり,病理学的検査の重要性を再認識した.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(2)
328-328, 2013
|