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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))
【一般演題】
卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化を好中球/リンパ球比(N/L比)で予測できるか
澤野 佳子, 千代田 達幸, 片岡 史夫, 野村 弘行, 山上 亘, 津田 浩史, 井口 蓉子, 橋本 志歩, 冨永 英一郎, 進 伸幸, 吉村 𣳾典, 青木 大輔
慶應義塾大学産婦人科
【目的】卵巣成熟嚢胞性奇形腫(mature cystic teratoma:MCT)の悪性転化の頻度は0.17-2%とされており,術前に悪性転化を診断することは困難な場合が多い.近年,発癌過程における炎症の関与が注目され,好中球/リンパ球比(N/L比)が様々な癌種においてバイオマーカーとなることが報告されている.そこで本研究では,N/L比を含む血液学的因子でMCTの悪性転化を予測できるか否か検討することを目的とした.【方法】当院にて1998年7月〜2012年12月に手術を施行したMCT悪性転化11例(扁平上皮癌8例,腺癌3例)および2010年4月〜2013年1月に手術を施行したMCT 97例を対象として後方視的に検討した.年齢中央値はMCT悪性転化例48(27-70)歳,MCT例34(19-78)歳であった.年齢,腫瘍径,白血球数,好中球/リンパ球比(N/L比),ヘモグロビン値,血小板数,CA125値,CA19-9値,SCC値と,悪性転化の有無との相関をMann-Whitney U検定による単変量解析,ロジスティック回帰分析による多変量解析にて検討した.【成績】単変量解析において悪性転化と相関を認めた因子は,高い年齢(P=0.008),大きな腫瘍径(P=0.002),N/L比高値(P=0.004),血小板数高値(P=0.005)であった.また,N/L比が4.0以上を示す症例の割合は,MCTで6.2%であったのに対しMCT悪性転化では45.5%と高値であった.年齢(中央値以上),腫瘍径(10cm以上),N/L比(4.0以上)を因子とした多変量解析では,N/L比(4.0以上)のみが独立した悪性転化の予測因子となった(P=0.027,HR=8.167).【結論】N/L比(4.0以上)は,MCT悪性転化の独立した予測因子であり,術前診断の一助となる可能性が示唆された.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(2)
334-334, 2013
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