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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))
【一般演題】
子宮卵管造影検査(HSG)の油性ヨウ素含有造影剤が原因と思われた妊娠初期甲状腺機能低下症の2例
平林 靖子, 小島 有喜, 長坂 康子, 張 暁慧, 丸橋 和子, 佐藤 典子
健生会立川相互病院産婦人科
不妊治療において,HSG後に妊娠することは稀ではないが,油性ヨウ素含有造影剤による甲状腺機能低下症の報告もある.当院で2011年1月〜2012年6月までにHSGを行った不妊症患者90名中,検査後半年以内に妊娠した11例を対象に甲状腺機能を調査した.妊娠判明後に測定したTSH値は正常例(TSH0.5-3.0μU/mL)5例,高値例(TSH3.1μU/mL以上)6例であった.正常例は全例生児を得た.高値例は4例で生児を得,1例全胞状奇胎,1例稽留流産であった.教訓的な2症例を提示する.【症例1】34歳0G0P.橋本病の既往があるが通院は中断していた.HSG前TSH2.56μU/mL,検査後次周期に自然妊娠が成立した.妊娠10週時TSH209.700μU/mL,FT4:0.18ng/dL自己抗体も高値で橋本病が悪化した.妊娠14週からチラージンの補充を開始したところTSHは速やかに低下しFT4も正常範囲内となった.児は正期産で出生し甲状腺機能異常なく,母体は産褥1ヶ月時もチラージン補充中である.【症例2】35歳1G1P.甲状腺疾患の既往歴,家族歴なし.HSG後の次周期に自然妊娠が成立したが,妊娠8週稽留流産となった.流産手術前TSH8.57μU/mL,FT4,FT3は正常範囲内,自己抗体は陰性であった.その5か月後に再度自然妊娠し,妊娠8週時TSH4.99μU/mLであった.妊娠継続したため慎重に経過観察しTSH3μU/mL台でありチラージン補充は行わなかった.児は正期産で出生し甲状腺機能異常なく,母体は産褥1ヶ月時TSHは正常化した.2012年8月に米国内分泌学会から,妊娠中および産褥期の甲状腺機能異常の取り扱いについて新しいガイドラインが刊行された.高齢妊娠,甲状腺疾患の既往歴がある妊婦などではHSG前後でも甲状腺機能検査と早期介入が重要と考えた.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(2)
338-338, 2013
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