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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))
【一般演題】
妊娠中に徐々に増大した卵巣脱落膜変化の1例
伊藤 路奈, 安藤 索, 玉城 英子, 齋藤 博恭, 岡宮 久明
久我山病院産婦人科
【緒言】異所性脱落膜変化は卵巣に好発し,主に妊娠中のプロゲステロン作用により脱落膜化を来すと考えられている.画像診断上は卵巣悪性腫瘍と酷似し,鑑別が困難である.卵巣腫瘍合併妊娠において悪性腫瘍を1〜5%の頻度で認めるため,尚更診断や治療方針に苦慮する.今回我々は,妊娠中に徐々に増大した卵巣脱落膜変化の1例を経験したので報告する.【症例】32歳.初産婦.他院にて人工授精施行.片側子宮内膜症性嚢胞を疑われた.妊娠6週当院初診.右側子宮内膜症性卵巣嚢胞を疑うも19mmにて経過観察とした.14週に不正性器出血で緊急受診した際に超音波検査上ダグラス窩に41mmの単房性嚢胞を認めた.27週106mmと増大.超音波検査上いずれも単房性で,内部に充実性部分は認めなかったが32週には190mmと顕著に増大したため,MRI施行した.MRI上も充実部分や隔壁,腹水は明らかではなかった.血清腫瘍マーカーも正常値であった.充分にインフォームドコンセント施行し明らかな悪性腫瘍の診断がつかないことから経過観察を希望され,37週4日帝王切開および左付属器切除術施行.病理学的診断はLarge solitary luteinized cyst of pregnancy and deciduosisであった.【考察】卵巣脱落膜変化は画像診断において悪性腫瘍との鑑別診断が問題になる.今回の症例ではサイズは顕著に増大したが,同様に症例報告されているような壁在結節等を認めず特徴的な画像変化を有しないため,診断・治療方針に苦慮した.卵巣腫瘍合併妊娠の頻度は1〜4%と報告され,半数は機能性嚢胞である.しかし経過中に悪性と診断されることもあるので経過観察は厳重にする必要がある.卵巣脱落膜変化の鑑別診断は今後の課題である.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(2)
342-342, 2013
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