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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))

【一般演題】
妊娠32週に下肢の表在性静脈に血栓症を発症した一例


安藤 歩1, 大熊 克彰1, 波多野 美穂1, 杉下 陽堂1, 鈴木 直2, 田中 守2
川崎市立多摩病院産婦人科1, 聖マリアンナ医科大学病院産婦人科2


 今回我々は妊娠後期に下肢の表在性静脈に血栓症を発症した一例を経験したので報告する.症例は40歳,3経妊2経産で,既往歴は左卵巣に径40mm大の単純嚢胞を認め定期的に外来通院していた.第2子は妊娠28週から切迫早産で管理入院であった.家族歴に特記事項なし.現病歴は妊娠初期と中期は特に妊婦健診でも異常は無かった.妊娠20週頃から左下肢の静脈瘤が目立つようになり,弾性ストッキングの装着を指示した.妊娠30週頃からは静脈瘤の怒張が目立つようになって来た.妊娠32週4日には左下肢の膝窩部の疼痛を訴えて来院した.膝窩部の静脈瘤に圧痛を認めたため緊急で下肢超音波検査と血液検査を施行した.左内側副伏在静脈に血栓を認めた.深部静脈血栓症は認めなかった.Dダイマーは1.9μg/ml,AT3は108%であった.直ちに管理入院として全身ヘパリン療法を開始した.約1週後には下肢の疼痛も消失した.約2週間の全身ヘパリン療法で血栓は縮小し器質化した.その後は血栓再発予防目的にヘパリンカルシウムを皮下注した.妊婦のマイナートラブルの一つに下肢や外陰部の静脈瘤がある.大部分は分娩後に自然軽快するが,本症例のように稀に血栓症を合併することがある.本症例は左内側副伏在静脈に血栓を認めた.内側副伏在静脈は表在性静脈の一つで,大伏在静脈に合流し,これは大腿静脈へと流れる.深部静脈血栓症と比較すれば非常にまれではあるが肺血栓塞栓症の原因となることがある.


関東連合産科婦人科学会誌, 50(2) 346-346, 2013


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