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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))
【一般演題】
ジゴキシンの投与による管理に苦慮した胎児頻脈の一例
西島 千絵, 名古 崇史, 山下 裕美, 薮田 直樹, 吉岡 伸人, 高江 正道, 五十嵐 豪, 水主川 純, 中村 真, 河村 和弘, 鈴木 直, 田中 守
聖マリアンナ医科大学産婦人科
胎児頻脈は胎児心不全をきたし,胎児水腫や胎児死亡の原因となる.治療として経胎盤的抗不整脈薬投与の有効性が報告され,2010年7月から本邦でも高度先進医療として認められている.今回我々は妊娠31週に胎児頻脈を認め,心房粗動と診断,ジゴキシンによる治療を行った症例を経験した.症例は34才1経妊0経産.初期より他院にて妊婦健診施行.妊娠31週0日胎児頻脈(220bpm)を認め当院紹介.胎児超音波検査にてFHB220bpmの心房と心室の収縮が2:1伝導の心房粗動を認め,胎児水腫は呈していなかった.治療としてジゴキシンの急速飽和(0.5mg×2回)を行い,治療開始後2時間で胎児頻脈は改善,その後内服(0.75mg/day)に変更し退院.妊娠34週3日ジゴキシンの副作用と思われる嘔気・食欲不振および胎児頻脈を認め再入院.内服を中止し,静注(0.5mg/day)と補液にて治療した.静注開始後,胎児頻脈は改善,また消化器症状も消失した.その後も静注による管理を行ったが,妊娠35週3日再度胎児頻脈を認めたため,新生児科医と相談の上,緊急帝王切開術を施行.児は出生後,心房粗動を認めプロカインアミド投与によりsinus rhythmとなった.本症例では,ジゴキシン内服中の母体血中濃度が1.17ng/mlと有効濃度であったが,出生後の児の血中濃度は0.59ng/mlと低値であった.本症例の様にジゴキシン母体血中濃度は必ずしも胎児血中濃度と相関せず,ジゴキシンによる胎児治療が困難である症例が存在することが明らかとなり,現在治験進行中のセカンドラインの必要性が痛感された.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(2)
352-352, 2013
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